2022年から年金制度が変わる! お得になるのはどんな人?
制度が変わってお得になるのはどんな人?
2022年4月以降さまざまな改正が行われることをご説明しましたが、ではこの改正でお得になるのはどんな人でしょうか。
まず、短時間労働者の被用者保険の適用拡大でお得になるのは、現在会社の健康保険などに加入できずに、自分で国民健康保険や国民年金に加入している人の中で、改正になることによって被用者保険の対象になる人、つまり、週の労働時間が20時間以上の人です。
保険料の半分は会社が負担してくれることはもちろんですが、補償の点においても病気やけが、出産時の休業補償の手当金が支給されるとともに、将来の年金額は確実に増えますし、障害年金や残された遺族への年金においても有利となります。
では、週労働時間20時間以上で30時間未満の会社員・公務員の配偶者の場合はどうでしょうか。会社員・公務員の配偶者は健康保険料も国民年金保険料も支払う必要がないのに、払ったものとして扱われるという大きなメリットを受けています。自分が被用者年金の被保険者になることで、保険料の支払いが新たに発生して手取りが減ることになります。
とはいっても、加入しないためには週労働時間を20時間未満に減らさなければいけないので給料が下がること、加入すれば会社の半額負担を受けながら、休業補償や年金の増額などを受けることができるので、将来を思えば加入するほうがお得だといえます。
65歳以上在職中の年金額の毎年改定への改正や、65歳未満の在職老齢年金の上限額の引き上げは、年金の受給権がありながらも厚生年金に加入している人には有利になる改正です。毎年年金が増え、停止となる額が減ることはとても嬉しいですね。
ただし、65歳以降の年金額の毎年改定については、加入月数も当然毎年改定されることになると予想されるので、そうなると配偶者加給年金や遺族厚生年金への影響も少なからず出てくることになり、不利になる人もあるかもしれません。今後の制度の詳細発表が気になるところです。
年金受給開始年齢の最長が75歳と伸びることや、確定拠出年金の加入対象者が広がることは、60歳・65歳以降も現役並みに働いている人にとっては、働けなくなって収入が年金だけに頼らざるを得なくなってからのお金の心配が大きく緩和されるので、大変心強い改正といえます。
制度が変わっても変わらない「年金額を増やす方法」
今回は2022年からの改正の説明でしたが、今後も人口構成や物価・賃金によって時代や先行きに添った改正が繰り返されることでしょう。
どんなに制度が変わっても、変わらずに会社員が老後の年金を増やす方法が3つあります。
1.収入を増やす
年金額は払った保険料に比例して増えていきます。厚生年金は収入が多いほど払う保険料も多く、その分将来の年金も増えます。
2.できるだけ長く働く
厚生年金は収入が多いほど払う保険料は増えますが、収入が同じなら期間が長いほど年金額が増えます。厚生年金は70歳まで加入し続けることができます。
3.受給開始の年齢をなるべく遅らせる
本来の65歳からではなく、遅らせれば遅らせるほど年金は増えていきます。その間の収入は働いて厚生年金に加入しつづけることで、さらに年金額は増えていきます。
公的年金の大きな強みは、「一生涯受け取り続けることができる」という安心です。
会社員以外の第1号被保険者であれば、保険料の払い忘れをなくすことは将来の年金だけでなく、障害年金や遺族年金を請求するときにもとても大切なことです。
自分自身の選択が老後の人生を決める
今回、年金制度が大きく改正されることによって、自身が決めないといけない場面が増えることが見込まれます。仕事をどういう形で続けるのか、どの制度を使って老後資金を確保しておくのか、いつ退職するのか、いつ年金を受給し始めるのかなど、選択肢が広がる分、制度を知っているかいないかで将来の年金額が大きく変わることになります。
正しい知識を持つためには、身近な人からの情報も大切ですが、年金制度はその人にとっては有利でも、別の人には不利ということもよくあります。
ひとそれぞれいろいろな考え方があって、60歳以降の働き方や、リタイア後の暮らしをどうしたいかも異なります。それには何が最善なのかを知るためには正しく制度を知理解しないといけません。公的年金や確定拠出年金など、幅広い知識を持つ専門家の情報をぜひ参考にしてください。
その上で自分が描く納得のセカンドライフのためには、何を選択するのがいいのかを決めてもらいたいと思います。
文・監修:ファイナンシャルプランナー(CFP) 小野みゆき