世界のお金を日本円にしてみたら?1000円で何が買えるのか比較してみた

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円安が進むとどうなる?

冒頭でも示したとおり、為替レートは2022年に入って急激に円安に動きました。行き過ぎた円安を是正するために、日本銀行は為替介入を行いました。為替介入には確かに一時的に円高になる効果はあるのですが、効果は一時的で、再び円安へ向かっています。

円と外貨を比べて、円が欲しい人が多ければ円高(外貨安)、外貨が欲しい人が多ければ円安(外貨高)になります。米国や欧州では、インフレを抑えるために金利を数度にわたって引き上げています。それに対し、日本では金利をすえおいています。金利の低い日本円と金利の高くなった外国の通貨、どちらが欲しいかは明白ですね。金利が高い国の方がもらえる利息が多いわけですから、投資家は外貨を買う(円を売る)取引を行い、その結果為替レートはどんどん円安に傾いているのです。

円安は、一般的には輸出産業に追い風です。同じ100ドルの品物でも、1ドル=100円の時に売れば1万円ですが、1ドル=150円になってから売れば1.5万円になるからです。

また、外国人観光客は日本にやってくる際に、少ない外貨でたくさんの円を手に入れることができるようになるため、旅行がしやすくなるでしょう。

一方で、日本に住む私たちは、身の回りのさまざまな食料や日用品などを海外からの輸入に頼っています。円安になると、その分輸入価格が上昇してしまうため、一層の物価高が進行することも考えられます。生活者目線で考えると、円安がこのまま進むとますます苦しくなってしまうでしょう。

ただ、資産運用の面で見れば悪いことばかりではありません。為替レートが円安に進むと、外貨建て資産の価値が高まるからです。

たとえば1ドル=100円のときに、1万円を100ドルに両替して、100ドルの米国株を買ったとします。仮にこの米国株がいっさい値動きしなかったとしても、為替レートが1ドル=150円の円安になってから売って円に両替すると、1万5000円に増えます(手数料は考慮しません)。このような利益を「為替差益」といいます。

ですから、つみたてNISAやiDeCoなどで海外資産に投資しているならば、円安が進めば資産は増えますので問題ありません。そのまま、投資を続けていれば、為替差益と経済成長による値上がり益の両方を得る期待もできます。

しかし、だからといって今から外貨建て資産を一気に買おうとするのはかえって危険です。歴史に照らして考えれば、今は極端な円安の局面です。今後の予想は誰にもできませんが、行き過ぎた円安が是正されて、円高に戻る曲面も当然あると考えられます。そうしたとき、円安で買った外貨建て資産は逆に損失を抱えてしまうことになります。そうした損失を防ぐためにも、これから外貨建て資産に投資するのであれば、少しずつ積立で購入することをおすすめします。

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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