後を絶たない投資詐欺 Z世代はSNS詐欺・ロマンス詐欺が特に注意
お金は預けておくだけでは増えない時代です。投資をしてお金を増やそう、と考えている人は多いでしょう。しかし、投資先の中には、優れた投資先と見せかけてお金を騙し取ろうとする「投資詐欺」もたくさんあるので注意が必要です。
今回は、投資詐欺の事例や種類と、投資詐欺を見分ける3つの要注意ポイントを解説します。
投資詐欺は昔も今もある
投資詐欺とは、確実に儲かるかのように宣伝して投資させ、お金を騙し取る詐欺のことです。
リスクとリターンはトレードオフの関係であり、リターンを得るためにはお金を失うリスクを取らなければなりません。
誰でも確実に儲かる投資があったらいいのですが、そんな投資は残念ながらありません。でも、「あなただけに教える秘密の投資」「このチャンスを逃したら、2度とお金持ちにはなれない」「元本保証・無リスクで高リターンが得られる」などと言われたら、興味を持つ人がいるのが実情なのです。
昔も今も、投資詐欺は後を絶ちません。これまでも、次のような投資詐欺が話題になりました。
豊田商事事件
1980年代前半、豊田商事という会社が金の地金を用いた悪徳商法を行い、問題化しました。豊田商事は、顧客と金の地金を購入する契約を結んだあと、金の地金を渡す代わりに「純金ファミリー契約証券」という証券を渡しました。実際には金の地金はないのですが、顧客は立派な証券を見て「確かに自分が買った金地金がある」と信じたのです。
将来、金の価格が上昇すれば、投資したお金が増えるからと、全国で数万人が投資に応じ、豊田商事は2,000億円以上のお金を集めました。しかし、証券は偽物ですから、金の地金が顧客に渡されることは一切なく、投資したお金も戻ってきませんでした。
マドフ事件
マドフ事件は、米国のNASDAQ市場の会長も務めたバーナード・L・マドフによる詐欺事件です。マドフは「年利10%の利回り」を出すという投資ファンドを運用、投資家から多額の資金を集めていました。しかし、運用の実態はというと、新たに投資された資金を取り崩して既存の投資家への配当に充てるだけの、いわば自転車操業状態だったのです。
マドフの投資ファンドは著名な投資家も巻き込みながら急激に資産を増やしましたが、2008年12月にファンドの解約金が支払えなくなり破綻したことから投資詐欺が発覚。被害総額は500億ドルとも650億ドルともいわれています。
TKO木本氏の騒動
2022年、お笑い芸人TKO木本氏の絡んだ投資トラブルが発覚し話題になりました。同氏はFXで大きな利益を上げたというトレーダーに自ら話を持ちかけお金を預けて投資を依頼したものの、実際には投資が行われておらず、お金を着服されてしまいました。さらに、「大企業の社長や会長職を経験した人しか買えない特別な土地がある」と持ちかけられた不動産投資に応じてお金を出したものの、約束したリターンが得られない状態になり、問題が大きくクローズアップされました。
同氏は、はじめは利益を得ていたように見えた(実際に利益を手にしていた訳ではないようです)ことから、安心して他の芸人仲間にも投資をもちかけ、集めたお金を投資に回していたとのこと。詐欺を働いたのは知人2人ですが、結果として詐欺の片棒を担ぐような格好となった責任をとって芸能事務所を退所、解決に向けた取り組みを進めているようです。
投資詐欺の9割を占める手法「ポンジスキーム」
上の3つの投資詐欺には、共通点があります。それは、いずれも「ポンジスキーム」と呼ばれる手法を用いたり、応用されたりしていることです。なお、TKO木本氏によればFXに関しては、詐欺にかけられたというよりは、結果的にポンジスキームに似た形になってしまったようです。
ポンジスキームのしくみは、次のとおりです。
①「必ず儲かる」などと元本保証・無リスクを騙り、年10%や20%などの高利回りの投資案件をでっち上げてお金を集める
②お金を運用しているように見せかける(実際には運用していない)
③後から参加する別の出資者から集めたお金の一部を着服し、残ったお金を以前の出資者に配当金と偽って横流しする
豊田商事事件は、配当金を支払っていませんが、お金を集めて金の地金に投資しているように見せかけた点はポンジスキームと同じです。また、マドフ事件もTKO木本氏の騒動の不動産投資も、表向きは投資をしているかのように見せかけながら、新たに集めたお金から配当を支払っていました。
ポンジスキームでは、出資者が増えているうちは実際に配当がもらえるため、信用してしまうパターンも多いようです。しかし、出資者が少なくなると、配当が滞り、やがて破綻します。破綻すれば、出資者のお金は戻って来なくなってしまうのです。
ポンジスキームの材料になる投資先はさまざまです。たとえば未公開株。今後上場する未公開株に投資すれば上場したときに大きく増やせると言われたら、なんとなく夢のある話に感じて、投資してしまう人もいる、というわけです。カジノコインリース、暗号資産・NFT関連、不動産関連、海外資産、私募ファンド、プライベートバンクなども同様です。一見、将来性のありそうな投資先、新しい資産、ブラックボックスの部分がある資産が、投資詐欺では利用されやすいのです。
ポンジスキーム以外にも投資詐欺はある
投資詐欺は、ポンジスキームのほかにもいろいろあります。
劇場型詐欺
劇場型詐欺は、まるで演劇のように、複数の人が出てきてストーリー仕立てで行われる詐欺です。未公開株や社債などの投資話を複数の業者が連携しているかのように見せかけて持ちかけ、投資を促します。
劇場型詐欺は、たとえば
①業者Aが架空の商品を100万円で買わないかと勧誘
②業者Bが架空の商品を120万円で買い取っていることを伝える
③業者Aから架空の商品を100万円で買い、お金を支払う
④業者Aとも業者Bとも連絡が取れなくなる
といった流れで起こります。
100万円で買った商品を120万円で売れれば、20万円の儲けが出ます。そう考えて、この例では100万円を支払ってしまったわけですが、業者Aと業者Bは実は同一人物で、100万円をそのまま騙し取ってしまったというわけです。
名義貸し型詐欺
名義貸しとは、自分の名義を他人に貸すことをいいます。名義貸しは違法行為なのですが、投資話をもちかけて名義貸しをさせたところで犯罪者に仕立て上げる詐欺が名義貸し型詐欺です。
名義貸し型詐欺は、たとえば、
①「株式や社債の購入権が当たったので、投資してほしい」と勧誘を受ける
②勧誘を断ると「購入権を使ってこちらで投資したいので、名義だけ貸して欲しい」と言われる
③名義貸しを承諾する
④後から「名義貸しを行なったのだから金を払え」と金銭を要求される
といった手順で起こります。
実際、名義貸しは違法行為ですから、犯罪者扱いされたことに驚き、お金を支払ってしまうケースが多いようです。
SNS詐欺・ロマンス詐欺
Z世代が特に注意したいのがSNS詐欺・ロマンス詐欺です。
SNS詐欺・ロマンス詐欺は、出会い系サイトやマッチングアプリで出会った相手に投資の勧誘を受け、投資をすると音信不通になってしまうのが特徴の詐欺です。
国民生活センターによると、2021年度に寄せられた暗号資産(仮想通貨)の相談件数は6,350件。「SNSやマッチングアプリで知り合った相手に勧誘されて送金したが、出金できなくなった」といったSNS詐欺の事例が増加しているそうです。このような相談は、主に20歳代から70歳代まで、幅広い年代から寄せられており、被害額も40歳代から70歳代では400万円を超えています。
また近年は、オンラインで外国人を装い、恋愛感情を逆手にとって詐欺を働く「国際ロマンス詐欺」も急増しているそうです。
ロマンス詐欺は、たとえば、
①出会い系サイトやマッチングアプリ等でマッチングが成立
②マッチングの相手から投資を勧められたり、お金が必要だと言われたりする
③投資しても出金できない、さまざまな名目でお金を要求される
④相手と連絡が取れなくなる
といったものです。
マッチングした相手は、はじめは優しくしてくれるので、心を許してしまうことも多いようです。お金で困る相手を助けたいと思い、何度となくお金を振り込むものの、実際は詐欺だというわけです。