地政学リスクが高まると世界経済や金融商品はどうなる? 投資家はどう立ち回る?

地政学リスクが高まると世界経済や金融商品はどうなる? 投資家はどう立ち回る?
マネーケア

投資につきもののリスクにはさまざまありますが、昨今気になるリスクは地政学リスクではないでしょうか。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、世界の投資マネーも動きを見せています。

これは、ある地域の状況が世界経済に影響を与える、地政学リスクの典型的なケースです。ロシアに対しては各国からの経済制裁があったり、貿易ができなくなったりと、経済への影響がダイレクトにひびく要因もあり、目が離せません。

今回は、地政学リスクが高まると、世界経済や金融商品の価格がどのように変動するのか、そして投資家はどのように行動するのか、過去の事例をふまえながら考えていきましょう。

地政学リスクとはどんなもの?

地政学リスクとは、ある地域の地理的・政治的なリスクのこと。特定の地域の社会的な緊張の高まりが、他の地域や世界経済に影響をおよぼし、さらには景気、金融商品の価格変動にも影響する、そのようなリスクのことです。

ロシアとウクライナの緊張状態は、今やロシアとウクライナだけの問題ではありません。日本・アメリカでも株価の下落という影響があり、投資家にとっても緊張する局面だと言えるでしょう。

また、地政学リスクには、軍事侵攻や戦争だけではなく、天災も含まれます。

地震、噴火、台風、津波、竜巻など、地球上にはさまざまなリスクにさらされる地域があります。リスクの大きさは、地理的な要因だけでなく、その地域のリスク管理体制にも影響されます。

たとえば、大雨による川の増水があっても、ある地域では川の堤防が決壊して近隣の地域が大きな被害を受け、さらに復興にかなりの期間がかかることがある一方、別の地域では堤防の決壊はわずかで被害は限定的、復興はすみやかに進む、という場合があります。

住民の暮らしだけではなく、地域経済にとっても、どちらがよいかは明らかですね。

戦争や紛争の起きやすい地域、災害の被害を受けやすい地域はリスクが大きくなります。

しかし、リスクが大きければリターンもその分見込めるので、投資マネーを集める側面もあります。ただし、状況をしっかり見ていく必要はあります。リスクの大きい投資先は値動きが大きく、目を離したすきに大きく値下がり、といった事態もあり得るからです。

では、そのようなハイリスクの投資先を選ばなければ、地政学リスクの影響を受けないかといえば、そうではありません。

ある地域が戦争・紛争、災害などで被害を受けることによって、世界の金融市場が影響をうけることが、地政学リスクというものだからです。

地政学リスクが起きると、金融商品の価格はどう動く?

地政学リスクが起きた場合、金融商品の価格はどう動くのでしょうか。一般的な傾向を見ていきましょう。

為替:「有事のドル買い」

外国為替取引の格言に、「有事のドル買い」という言葉があります。戦争などが起こった有事には、為替相場がどのように動くのか見通しがつきにくくなります。その場合には、アメリカドルを買っておくと安心、という経験則です。アメリカドルなら流動性があり、国際的な信用があるため手堅いという考えからきたものです。

ドルを買うお金はどこから来たかといえば、新興国への投資マネーであることが多く見られます。先行きが不安定ななか、新興国への投資はリスクが大きくなりすぎるのです。ある程度リスクをとれる情勢であれば、投資マネーは新興国へ向かいますが、ひとたび事が起こればリスクの小さいドルに流れます。

多くの投資マネーがドル買いに走ればドル高になり、為替相場が動きます。

金融商品:株・債券は反対の値動き

地政学リスクは、投資マネーをリスクの大きいところから小さいところへ動かします。

そのため株よりも債券を選ぶ投資家が増え、株価は下落し、債券価格は上昇します。

株式は、株価の安い時に買って、高くなってから売れば、売買益が得られます。また、投資先の企業から配当金を得られます。ただしこれらの利益は約束されたものではありません。

ですから投資家は、利益を出す株式を選ぶために情報収集しているのですが、逆にいえば、もくろみがはずれて損失を出してしまう可能性もあるということです。

一方債券は、満期がきたら額面金額が受け取れます。あらかじめ、いくら受け取れるのか約束されているのでリスクは小さくなります。逆にいえば、額面金額以上の利益は出せないともいえます。

リスクをとれる状況であれば、投資マネーは株式に向かいますが、地政学リスクが起これば、投資マネーはここでもリスクの小さい債券に流れていきます。

商品(コモディティ):金・原油の価格上昇

コモディティとは一般的に「商品」を意味する言葉で、コモディティ投資とは、商品先物市場で取引される商品に投資することです。たとえば、金やプラチナのような貴金属、原油やガソリンなどのエネルギー、大豆やトウモロコシなどの穀物といったものです。

経済が不安定になると、「お金より物」と考える投資家も多く、金や原油の価格が上昇する傾向にあります。

コモディティの価格変動は、地政学的リスクが発生した地域にも大きな影響を受けます。たとえば、ロシアとウクライナの緊張状態については、原油価格の高騰につながっています。これは、ロシアが天然ガスで世界2位、原油で3位の生産量があるものの、西側諸国がロシアのエネルギーを輸入しない措置をとっていることと関係しています。

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タケイ 啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。 36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務...

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