iDeCoの受け取り方 一括と年金で税額はどう変わる?どの受け取り方が良いのか

iDeCoの受け取り方 一括と年金で税額はどう変わる?どの受け取り方が良いのか
マネーケア

退職金が出る場合、受け取り方で税金はどう変わるのか

では、退職金とiDeCo積立金の合算金額が退職金控除を超えてしまう人はどのように受け取るのが良いでしょうか。
以下の前提条件をもとにA~Cの3パターンで具体的に税金の計算をしてみましょう。

[前提条件]
●60歳時点で退職金2100万円、iDeCoの資産が900万円
●勤務年数が30年、iDeCoのへの加入期間が25年の場合
●会社から支給される退職金の受け取り時期はすべて60歳
●公的年金の受給開始は65歳からで年間200万円程度(厚生年金受給者の標準的な水準)

Aパターン)退職金+iDeCoをどちらも60歳で受け取る(一時金)
Bパターン)退職金は60歳、iDeCoは65歳に時期をずらして受け取る(一時金)
Cパターン)退職金は60歳、iDeCoは64歳までは毎年60万の年金を受け取り65歳で一時金として受け取る(年金+一時金)

Aパターン)退職金+iDeCoをどちらも60歳で受け取る(一時金)

退職金2100万円、iDeCoの資産900万円、合わせて3,000万円の退職所得として扱われます。
会社から退職金が出る場合、「勤務年数」「iDeCo加入期間」の長いほうで計算式に用いる年数を決めます。

今回は勤務年数が30年、iDeCoへの加入期間が25年ですので、30年で計算されます。
30年の勤続年数だと以下の計算方法の加入年数(勤続年数)が20年を超えている場合に該当しますので、前述した退職所得控除の計算式に当てはめると退職所得控除は「70万円×(30-20)年+800万円=1,500万円」となります。

退職所得=(退職金+iDeCo-退職所得控除)×1/2=(3,000-1,500)×1/2=750万円
こちらのケースだと750万円の所得として扱われることになります。
退職所得に対する税率は下記のような累進税率となります。

退職所得に対する税率表

退職所得に対する税率表
表:筆者作成

●Aパターン)課税額 183万9,000円
Aパターンは750万円の退職所得として扱われますので、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると750万円×23%-63万6,000円=108万9,000円の税金がかかります。
住民税は一律10%で75万0,000円、合計183万9,000円の課税額です。

上記の通り、会社から退職金がたくさん出る場合は、退職所得の額に応じて累進課税となるため、税額も大きくなりがちです。
そのため、iDeCoの受け取り方として、退職金が多い方は一時金としての受け取る際には十分に注意しましょう。

Bパターン)退職金は60歳、iDeCoは65歳に時期をずらして受け取る(一時金)

では、退職金の受け取り時期とiDeCoの受け取り時期をずらすとどうなるでしょうか。たとえば、上記のケースで60歳に退職金を受け取り、65歳でiDeCoを一時金で受け取るとしましょう。

●Bパターン)課税額 142万7,500円
[60歳時の課税額]
退職所得=(退職金+iDeCo-退職所得控除)=(2,100万円-1,500万円)×1/2=300万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると所得税:300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円なります。
住民税は一律ですので、住民税:300万円×10%=30万円となり、60歳時は合わせて50万2,500円の課税額となります。

[65歳時の課税額]
65歳時には60歳時に退職所得控除枠をすべて使い切っているため、退職所得から差し引ける金額はありません。
退職所得は(900万円-0万円)×1/2=450万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると
所得税:450万円×20%-42万7,500円=47万2,500円
住民税:450万円×10%=45万円 となります。
60歳時の合計税額は92万2,500円(所得税+住民税)となります。

60歳と65歳にそれぞれ支払う税金の合計額は142万5,000円となり、同時に貰ったときのAパターン183万9,000円よりも税金が少なくなりました。
つまり、合算した金額はAパターンと同額であっても時期をずらすだけで、税率を低く抑えることができ、その分所得税の額は少なくなるのです。

Cパターン)退職金は60歳、iDeCoは64歳までは毎年60万の年金を受け取り65歳で一時金として受け取る(年金+一時金)

最後に60歳~64歳までの5年間は毎年60万円ずつを受け取り、残りの600万円を一時金として65歳に受け取った場合はどうなるでしょうか。

●Cパターン)課税額 100万5,000円
[60歳時の課税額]
退職所得=(退職金+iDeCo-退職所得控除)=(2,100万円-1,500万円)×1/2=300万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると所得税:300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円なります。
住民税は一律ですので、住民税:300万円×10%=30万円となり、60歳時は合わせて50万2,500円の課税額となります。
※退職金は60歳で受け取るため、課税額についてはBパターンと同様の計算となります。

[60~64歳時の課税額]
60-64歳のiDeCo年金受給(計300万円分)の税金:0
※65歳未満の控除額である年額60万円以下のため税金はかからない

[65歳時の課税額]
65歳の年金一時金受け取り(残600万円分)の税金:
60歳時に退職所得控除枠をすべて使い切っているため、退職所得から差し引ける金額はありません。退職所得は(600万円-0万円)×1/2=300万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると
所得税:300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円
住民税:300万円×10%=30万円
税額:50万2,500円
60歳~65歳までにそれぞれ支払う税金の合計が100万5,000円となりました。

現在の多くの現役世代の人は公的年金の受給は65歳になってからです。ということは、64歳までの4年間は毎年60万円の公的年金等控除が余るため、このような受け取り方をすることで税負担を減らすことができます。
なお、こちらの年金方式は65歳以上で公的年金を受け取るようになると非課税枠を超えてしまう可能性があるため、注意しましょう。

【結論】どの受け取り方が正解かは、人によって変わる

上記の試算結果をまとめるとAパターン>Bパターン>Cパターンの順で税額が少なくなり、AパターンとCパターンの差は約80万円にもなります。このようにiDeCoは受け取り方次第で実際に支払う税額が大きく変わることが分かりました。

どの受け取り方が正解かは、人によって変わるため一概には言えませんが、基本は一時金として受け取るのが良く、退職金が多い人は、退職金とiDeCoの受け取り時期をずらすことを検討しましょう。

また、パターンCのようにiDeCoは一時金と年金を組み合わせて受け取ることもできますので、60歳~64歳まで余った公的年金等控除を活用し、課税額を圧縮することができることも覚えておくと良いでしょう。

iDeCoに関する税制は今後変更される可能性がありますが、自分の退職金や公的年金、iDeCoの積立金の詳細を把握し、iDeCoで運用した資産を受け取るときにできるだけ節税になるように行動することを心がけることが重要ですね。

KIWI

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。 プ...

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