雇用保険料2.7倍で給料が減る?コロナで危機を迎える雇用保険制度
雇用保険制度の財源はどうなる?
雇用保険の積立金のうちでも雇用安定資金の残高が底をついてしまい、あちらこちらから搔き集めている状況になっています。
今後の雇用保険の財源としては、国の一般財源からの支出と雇用保険料の保険料率を上げることが考えられます。
しかし、政府は国費への依存は非常時だけでなければ、財政的にも厳しいので、財政赤字が膨らんでしまうと協力的ではありません。
一方、雇用保険料の値上げとなると企業負担が一層増すので、企業側は難色を示しています。
そこで、この雇用保険制度の財源については、今まで積立金に余裕があるとの理由や「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2019」などの要請から、特例で保険料率が引き下げられていた経緯があります。
これが2022年からは引き上げの方向に転じる可能性が出てきました。
雇用保険料が上がれば給料が減る?
雇用保険の失業等給付の保険料率※8は、原則12/1000を労使折半になっています。
これが弾力条項の適用により毎年±4/1000の幅で調整され、その年度の保険料率が決まることになっています。
今までは保険料率が特例で下がっていたのです。ですから保険料率は、16/1000(1.6%)から8/1000(0.8%)の間で決めたとしてもおかしくはないのです。
もし原則に戻って、プラスの方向になれば最大1.6%になるので、保険料率は今の2.7倍まで上がることになります。従業員分はこの半分なので、8/1000(0.8%)になります。
給料が月額20万円の場合を例にとって試算してみます。
従業員分
20万円×0.8%=1600円
20万円×0.3%=600円(令和3年度)
差額
1600円-600円=1000円
毎月の給料が20万円の人で、給料が1000円減ってしまうことになります。
これでは賃金がベースアップしても、保険料の増加で打ち消されてしまいます。
今まで雇用保険の保険料率は、特例で下がっており、弾力条項もマイナスの適用になっていました。
今後は±0の場合や最悪プラスの方向になる可能性もあることを考慮に入れておく必要があります。
※8:厚生労働省「雇用保険料率の弾力条項について」
まとめ
経済の動きには、好景気・不景気の波があるのは仕方のないことです。しかし、今回のような突然のコロナ禍は、予想ができません。
個人レベルできることには限りがありますが、突発的なことや万が一における備えが必要だということを痛感したのではないでしょうか。
新しく法案が決まったり、改正が行われたりする前には何らかの形で報道が行われます。将来設計を考える上では、こうした今後予想される動きに注目しておく必要があります。