基礎控除、給与所得控除…何が変わる? 令和2年分以降の年末調整の変更点をチェック

マネーケア

(3)給与所得者の保険料控除申告書

次の4つの保険料控除を受けるための申告をする書類です。

・生命保険料控除
・地震保険料控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除

生命保険料控除

1年間に支払った生命保険料に対して受けられる控除です。「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の他に、保険会社の名称・新旧の区分・支払保険料などを記入し申告します。保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」も併せて提出する必要があります。

地震保険料控除

1年間に支払った地震保険料または旧長期損害保険料に対して受けられる控除です。保険会社の名称や地震・旧長期の区分・支払保険料などを記入し申告します。保険会社から送られてくる「地震保険料控除証明書」も併せて提出する必要があります。

社会保険料控除

自身や家族分として支払った社会保険料に対して受けられる控除です。国民年金保険料を支払っている場合は、日本年金機構から被保険者本人へ郵送される「社会保険料(国民年金)保険料控除証明書」を提出する必要があります。

小規模企業共済掛金控除

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に加入して掛金を支払っている場合に受けられる控除です。申告書に掛金の金額を記入し、国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金控除証明書」も併せて提出する必要があります。

給与所得控除と基礎控除の改正

令和2年度税制改正により、給与所得控除額に関して10万円の減額と上限金額の引き下げが行われました。また、給与所得控除の上限額が適用される収入金額が850万円、その上限額が195万円に引き下げられています。


図:国税庁HPより筆者作成

給与所得控除の10万円減額は、基礎控除の10万円増額とセットで行われ、多くの方にとって実質的に影響はありませんが、年収850万円超の高所得者にとっては、税負担が増えることになります。この改正が、新設された所得金額調整控除の背景となっています。

税制改正による年末調整への影響

一言で言えば、今年の年末調整はより複雑になっています。
年収850万円超の方を対象とする、令和2年分の所得税から新設された控除項目の所得金額調整控除は、基礎控除や配偶者控除などといった所得控除の仲間ではなく、給与所得の金額を計算する際の一項目です。

つまり、いままでは、給与所得の金額は給与所得の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出することができましたが、令和2年分からは、そこからさらに所得金額調整控除を差し引くことになります。

例えば、夫婦とも給与等の収入金額が850万円を超えていて、夫婦の間に23歳未満の扶養親族である子が1人いるような場合は、その夫婦の両方が、この控除の適用を受けることができますので、忘れずに申告をするようにしましょう。
※参考:ZEIMO「所得金額調整控除とは? 夫婦共働きでも適用可能」

年末調整は「税」を知るよい機会

令和2年の年末調整に影響を与える税制改正項目は、主に高所得者の方をターゲットにしたものが多い印象です。しかし、高所得者の方に限らず重要な変更もあります。
配偶者や扶養親族の合計所得金額要件等の見直しでは、給与所得のみの場合は実質的な影響はありませんが、合計所得に給与所得以外が含まれる人は、改正後、配偶者控除等に該当となる可能性があります。

また、いままで「未婚のひとり親」は控除を受けられませんでしたが、ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正により、新たに控除を受けられる可能性も出てきました。
会社に提出する年末調整書類を通じて、税制改正による変更内容を把握し、ご自身の税負担がどのように変わるのかを理解しておきたいですね。

文・監修:ファイナンシャルプランナー(CFP) 小野みゆき

小野 みゆき

中高年女性のお金のホームドクター 社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー・年金マスター・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 企業で労務、健康・厚生...

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