居住用の不動産賃料は何と連動する? データから読み解く将来の動向
新型コロナが家賃に与える影響とは?
予想もしなかったコロナの影響で、休業や営業自粛する業界では、大きな打撃を受けています。外食産業は宅配や持ち帰りに切り替えたり、物販を中心とした小売店舗は通販のみにしたりする会社も出てきました。通販がメインになり物流倉庫が多くなれば、地方の賃貸住宅の需要が高まるかもしれません。
また、仕事のやり方もテレワークやオンライン化が定着すれば、必ずしも会社や駅からの距離が重要視されなくなります。すでに自粛後もテレワークを常態化する企業もみられます。あえて都心に住むメリットが、薄れてくることになります。
このような変化からワークスペースが取れるか、ネット環境の整備ができているかなどの面積や設備面が物件を選ぶ要因になるでしょう。自分なりのこだわりや、物件に付加価値が求められるので、そういった物件は家賃を下げなくても、入居が決まります。
さらに、全般的には単身世帯は増加しており、もし景気が悪くなれば持家思考が低下して、賃貸物件に住み続けることになります。ですから、すぐに家賃が下がることにはなりません。
賃貸住宅建設に適した土地の価格が上昇し、建設できる土地が減っているので、すぐに供給過剰になるとはいえません。ですから、賃貸住宅の家賃相場に影響が出てくるのは、もっと先のことになるでしょう。
一方、商業用のオフィスの賃料は、景気の変動を強く受けます。需要が少なくなって空室率が高くなれば、経費や税金の負担が大きいので、賃料を下げてでも、空室を埋める場合もあります。住宅と住宅以外では、同じ家賃といっても、賃料の考え方に違いがあります。
災害と地域の特性
この数年、日本列島は思いにもよらない災害に見舞われています。洪水や地すべりといった災害が起こることは、日常の一部として備えた方がよいと思われるほどです。大雨になれば、いつも冠水や浸水に見舞われる場所では、この数年賃貸物件の空室が目立つようになってきました。
たびたび浸水の被害に遭うようでは、入居の継続は難しいものになります。安心を考えると、ハザードマップで危険度が高い場所は、利便性がよくても賃料相場にはマイナス要因になります。
人口流入が不動産賃料に関係する
この数年は、都心居住思考の高まりやインバウンド需要などで、地価や建物価格が高騰した結果、マンション等の買い控えの傾向が見られます。その結果、マンションや戸建てを購入せずに賃貸物件に住み続けることで、賃貸住宅の需要に対して供給が少なくなり、都心では家賃がわずかながら高くなっているようです。
今回のコロナショックでは、日経平均株価(終値ベース)で約30%も下落しています。しかし、経済不安に陥ったとしても、居住用物件からすぐに退去するわけではないので、家賃はそこまで下がることはありません。人口流入が続く地域では、居住用不動産賃料へのコロナウイルスの影響は、限定的にとどまるのではないでしょうか。
執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP) 池田 幸代