なぜ学校でお金のことを教えてくれないのか? 考えられるたった1つの理由
「金融リテラシー」という言葉、読者の皆さんは聞いたことがありませんか?
リテラシーというのは金融に限った言葉ではなく、「認識・解釈・分析し、活用する応用力」という意味で使われる事が多いようです。
金融リテラシーが低いのは、みんな同じ
筆者は日ごろ、この金融リテラシーが決して高くない人向けのマネーセミナーを開催しているのですが、集まっていただく人は皆、金融に対する知識が無い現状を、何とか改善したいとの思いで来場されます。
そして口々に「私は」知識がないから…など、あたかも自分だけが社会から遅れている、勉強してこなかった、と言わんばかりで、その自信の無さに筆者が励ます場面もあります。
しかし、考えてみてください。
誰が今まで、株式の知識や、物価上昇に対する現金の価値変動を教えてくれたでしょうか?
誰が今まで、給与から強制的に控除される、社会保険料と所得税の説明をしてくれたでしょうか?
「誰も教えてくれなかった」と答える人が大半でしょう。
私たちが暮らす日本において、漢字や九九の計算、歴史や道徳教育は9年間の義務教育で教わりますが、お金の貸し借りにまつわる利息や、資本主義社会の基礎ともいえる株式については、学校ではなかなか教えてもらえないのが実情です。
ではなぜ、長い人生において誰もが必要な「お金」についての知識付けや、管理・運用の反復練習の場が義務教育期間中、公平に与えられていないのでしょうか。
お金の教育を学校で教えてもらえない、意外な理由
2014年、日本証券業協会に事務局を置く「金融経済教育を推進する研究会」(座長:慶応義塾大学名誉教授 吉野直行氏)による調査で、中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査が行われました。(調査方法は郵送、調査対象は全国の中学校・高等学校の教諭、回収数は4462通(発想総数3万2220通中:回答率13.8%))
調査結果では、教員のほとんどが「金融経済教育が必要(図表24 95.0%)」と回答(図表24 95.0%)しているのに対して、約3割の教員が「金融経済教育を行っていない(図表22 27.7%)」という実態でした。
金融経済教育を行っている場合でも、全体の約4割が「教科書の記載内容が不十分(図表11 37.8%、教育を行っていない・無回答は除く)」、約6割が「授業時間が不十分である(図表15 59%、教育を行っていない・無回答は除く)」 との回答をしています。
これでは、生徒がしっかり理解できるよう教育するのは難しいのではないでしょうか。
反対に「金融経済教育が必要ではない」と回答した理由(図表26)を見てみると、「学校では、教えるための体制や仕組みが整っていないため」や、「教員がそのための知識や指導方法を身に付けていないため」と、教える側の問題を理由に挙げているのが目立ちます。
つまり、学校でお金のことを教えてくれない理由は、「教える側にその環境や知識、能力が備わっていないから」という、決してひねった理由がある訳ではなかったのです。
また、教えてくれていたとしても、不十分な教科書と授業時間ではしっかりした知識が身に付かず、結局は教えてもらえないのと同じことになってしまいます。
学校の先生だって好き勝手に授業が出来るわけではありません。教育プログラムが組まれて、使用する教材も決まっている中で、教育目的達成のために時間を割り当てるのは、相当なご苦労があるのだと察します。
お金のことは、実体験で学ぶ
学校では金融や経済の専攻をしないと、なかなか知識が身に付かない事がわかりましたが、ではどこで学べばいいのでしょうか。
まず一つはファイナンシャルプランナー(FP)へ相談し、実際に投資信託や株式で運用を始めてみることです。実体験は何よりの勉強になります。少額でもいいので、金融商品を購入することからはじめましょう。机上で書籍等を読むよりも早く、仕組みや損益が、リアルタイムで身に付きます。
ここでのポイントは、複数人のFPに意見を聞く事です。所属している会社や立場、取扱商品の制限などから、一口にFPといっても様々です。3人ぐらい、会社や得意分野の異なるFPから意見を聞きましょう。
二つ目は、継続して経済指数など、市場の動向を日々気にする事です。
購入した商品の損益を、一喜一憂しろというのではありません。大衆ニュースで知る事のできる経済情勢は最低限、「なんとなく」でもいいので変化を気にしてみましょう。
まとめ
実際、筆者の業務では個々のクライアントに、真っ先に行うのが「金融教育」です。教育現場でその知識を身につけてこなかった社会人の彼女たちに、最低限の知識を教えるところからスタートします。
難しいように思えるかもしれませんが、日々の積み重ねでリテラシー上級者へなることができます。
政治や企業に大きなアクシデントがあった際、株価はどう動いたか、その後はどうなったか、追いかけて見続ける事で、「過去を見ていた力」が、やがて「未来を見る力」へ変わります。