キャッシュレス決済比率、日本と世界でどう違う? 日本の今後は?

キャッシュレス決済比率、日本と世界でどう違う? 日本の今後は?
マネーケア

世界のキャッシュレス決済比率はどうなっている?

では、世界に目を向けて、さまざまな国のキャッシュレス決済について(※)見ていきましょう。

●韓国

野村総合研究所のレポートによれば、韓国のキャッシュレス決済の比率は、2007年時点でも61.8%も高いのですが、2016年には96.4%と、世界で最も高くなっています。
主な取り組みとして、キャッシュレス決済をした場合に税金の還付が受けられる制度の拡充、小規模な店舗向けに手数料の規制があります。
また、一定条件を満たす店舗には、キャッシュレス決済導入を義務化しました。

●イギリス

イギリスのキャッシュレス決済の比率は、68.7%となっています(2016年、以下同じ)。
ロンドン五輪(2012年)を契機に、政府が主導して非接触決済(デビットカード)普及促進したことが功を奏しました。
また、政府・民間共同での協議会の設立、政府内での権限を集約することで、複雑化を避けられたのではないでしょうか。

●オーストラリア

オーストラリアのキャッシュレス決済比率は59.1%です。
テレビCMやウェブサイト等を利用して、キャッシュレス決済の認知・利用促進をするとともに、決済サービスであるデビットカード、EFTPOSを非接触決済に対応するようにしました。また、手数料の規制もしました。

●シンガポール

シンガポールのキャッシュレス決済比率は58.8%です。
国家の電子化に早くから取り組んでいたほか、政府による「スマートネーション構想」のもと、キャッシュレス社会実現にかかる施策を推進中です。
2025年までには小切手の使用ゼロを目標に、現金を使用する機会を減らす政策をとっています。

●カナダ

カナダでのキャッシュレス決済比率は、56.4%
政府によってペニー硬貨や小切手を廃止することで、現金決済からキャッシュレス決済にシフトするような誘導策をとっています。
また、キャッシュレス決済の手数料も安くすることを、国際ブランドと合意しています。

●スウェーデン

スウェーデンでは、キャッシュレス決済比率は51.5%です。
現金決済には人出や輸送にコストがかかります。そのうえ、スウェーデンでは金融機関などでの強盗が多いことも、キャッシュレス決済推進の要因です。
街中では、現金決済お断りの店舗が増えています。

キャッシュレス決済が進んでいる国では、すでに50%以上がキャッシュレス。普及のためには、さまざまな施策も必要なようですね。

※:野村総合研究所「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」

日本のキャッシュレス化は今後も進む?

今後、日本でのキャッシュレス化は進んでいくのでしょうか。

政府は2025年にはキャッシュレス決済4割を目指しており、これまでも徐々にではありますが、キャッシュレス決済は増えています。

キャッシュレス決済には、多くのメリットがあります。
現金を持ち歩くことに起因する、防犯上の危険を避けることができます。また、現金決済にかかるコストを減らすことができます。現金決済をしている店舗では、レジの管理、つり銭の準備、現金の集計などに人手と時間がかかっています。

そもそも、紙幣や硬貨の製造、金融機関への輸送、警備、ATMの維持管理にもコストがかかります。労働人口の減少が避けられない日本において、生産性向上は重要事項。キャッシュレス決済は、今後ますます広がっていくことと思われます。

また、キャッシュレス決済が主流になることで、お金の流れが見えやすくなります。
給料を現金で受け取って、いろいろな支出を現金で支払うと、レシートなどの控えや記録がなければ、いつ、いくら、何の収支があったのかわからなくなります。
キャッシュレスであれば、記録に残るので家計管理に便利です。

さらに社会的な視点に立つと、マネーロンダリングや脱税などの犯罪行為を防ぎやすくなります。現金は匿名性が高く、どのような経緯でその人が持っているお金なのか、正確に把握することは困難だからです。

一方で、キャッシュレス決済を安心して利用するためには、セキュリティ対策も必須です。IDやパスワードの管理、認証方法など、業者側の対策だけではなく、消費者側もそれらを必要不可欠なことだと認識し、面倒がらずにすることが大切になります。

現金のわかりやすさ、シンプルさは魅力ですが、時代は刻々と変わります。ポイント還元や管理のしやすさなどの消費者メリット、コスト削減や生産性向上などの社会的メリット、どちらも理解することで、キャッシュレス決済が今後も広まっていくことでしょう。

タケイ 啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。 36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務...

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