住宅ローン減税延長へ!しくみと変更点、得する条件をチェック

住宅ローン減税延長へ!しくみと変更点、得する条件をチェック
マイホーム・住宅ローン

2021年税制改正でどんな人が得をする?

この改正では、住宅購入を迷っていた人、これから住宅購入を検討しようという人には特例の延長は朗報です。

住宅購入には、多額の資金が必要です。消費税が2%増税されると住宅は高額なので、3000万円なら60万円、4000万円なら80万円もの負担が増えます。これが消費税増税前の前の水準で購入できるとしたら、とても有利です。
当初この消費税増税の緩和策は、2020年末までの予定でした。しかし、住宅ローン減税特例が延長されたことにより、コロナ禍の影響で住宅購入に迷っていたり、悩んでいたりして購入に踏み切れないでいた人にとっては、税金の還付を受ければ増税前の価格で建物を購入するチャンスが再度巡ってきました。

特に住宅ローン減税の要件である床面積の緩和の影響は、コンパクトな生活を望む人や単身、夫婦だけなど小規模な住宅を購入したいと思っていた人には、恩恵が大きいでしょう。床面積が小さい1LDK程度の住宅には、今まで住宅ローン減税の適用がなかったので、この改正を機会に住宅ローンを利用して小規模な住宅を購入しようという動きが出てくると思われます。

総務省統計局「地方、世帯員数別世帯分布2020年1月分」※1によれば、世帯の人数では単身が一番多く34.4%、次いで2人が29.6%、3人が16.8%と少人数の家庭が多いことがわかります。少人数の世帯の場合、広い住宅を必要としない人もいます。

かつては賃貸物件に住んでいて家族が増えて手狭になり、住宅を購入するケースが主流を占めてしましたが、現在では少子高齢化で子どもの数も減っていますし、結婚しない未婚の期間も長くなっています。こうした世帯の人数が少ない場合には、賃貸住宅に住むケースが多いのですが、低金利の住宅ローンを利用して住宅を購入すれば、家賃並みのローン返済で済むかもしれません。
※1:https://www.stat.go.jp/data/kakei/setai_bunpu.html

今後は控除率「1%ルール」の変更もある?

今回の2021年税制改正では見送られましたが、隠れた論点として住宅ローン減税の控除率が会計検査院から問題視※2されています。会計検査院は、国や地方自治体が税金を無駄遣いしていないかチェックする役割を担っています。さて、何が問題なのでしょうか。

会計検査院は、住宅ローン減税の控除率の「1%」が妥当かどうかに目をつけました。2019年11月の決算検査報告で関係各省に、この控除率1%が国民の納得できる必要最小限のものになっているかなどの検証を行うように指摘しています。

会計検査院の調査※3では、2017年に住宅ローン控除の適用を始めた人のうち、借入金利が1%以下の人が78.1%を占めていました。

住宅ローン減税は、もともと右肩上がりの高金利の時代に、住宅ローンの金利負担を軽減するために始まったものです。たとえば5%の金利で住宅ローンを借りていて、負担軽減のために1%税金を戻すというのなら何の問題も生じません。

しかし、このところの超低金利が続く中にあっては、変動金利で0.5%前後という金融機関も多くあります。ですから1%以下の金利で住宅ローンを組んで、住宅ローン減税で1%税金が戻ってくるという逆ザヤが生じています。つまり、住宅ローンを組むことによって、儲かるしくみになっているのはおかしいと指摘したのです。中には逆ザヤ目的で住宅ローンを組む必要がない人までローンを組む状況も見受けられ、繰り上げ返済を抑制する動機づけにもなっているというのです。

これを受けて2021年度税制大綱では、控除率について2022年度税制改正で見直す予定としています。今後は住宅ローン残高の1%という控除率を縮小するかどうかも議論され、ローン残高の1%か支払利息額のいずれか少ない方にするなどの見直しが予想されます。ただし、1%の控除率の引き下げは、すでに住宅ローン控除を利用している人には適用しない見通しです。
※2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64445990Q0A930C2EE8000
※3:https://www.jbaudit.go.jp/report/new/characteristic30/fy30_kanshin_ch04_p1.html

住宅ローン減税と今後の動向

2021年税制改正の後押しを受けて、今まで住宅ローン減税の対象にならなかった床面積が40㎡以上50㎡未満の小規模な住宅の価格には「減税プレミア」がつくかもしれないと話す業者もいます。需要が増えるため、多少値段を高めにしても成約に結び付くという目論見のようです。

さらに住宅ローン減税の控除率1%についても、減税による控除額が支払利息を上回る状況が是正される可能性が大きいので、13年間1%の控除が受けられるのは2021年だけになりそうです。こうした背景から不動産業界では、「1%の控除と13年間の減税」が営業トークに用いられるのではないでしょうか。

税制改正を受け、今年を目標に住宅購入を検討する人は少なくないでしょう。ただし、持ち家の価格や賃貸住宅の賃料は高止まりの傾向にあるため、資金計画を慎重に立てないと収支が狂ってしまう可能性があります。特に首都圏のマンションは新築販売件数、中古成約件数とも回復し、価格も高値圏にあります。需要の強さから好立地で人気のエリアは、高止まりが当面続くと予想されています。

減税制度の恩恵を受けるべく2021年の9月または11月までに何が何でも契約を…と考えていると、状況の変化に対応できず、住宅ローンを無理なく返せない状態に陥るかもしれません。持家、賃貸住宅のどちらに住んでも老後資金は必要になりますし、子育て世代なら教育費もかかります。それには将来においても毎月一定額の貯蓄ができる程度の家計であるのか、物件選びには将来のシミュレーションも欠かせません。

また住宅の購入にあたって価格以外に注意したいのが、将来的な資産価値です。老後は自宅を売却して介護施設へ入居することも多くなってきています。こうした観点から駅からの距離、利便性、行政のサービス、災害の危険度などの多方面からのアプローチを忘れないようにしましょう。

執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP) 池田 幸代

池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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