アメリカGDP大幅悪化!日本への影響はどうなる?
日米の経済関係はどうなっている?
2017年にトランプ政権が誕生して、「強いアメリカ」を目指す政策がとられてきました。アメリカ国内産業の中でもヘルスケア分野やインフラ投資に力をいれて、史上最長の好景気となりました。
しかし、アメリカ第一主義を掲げる中で問題なのは、貿易赤字です。国別の割合で最も多いのは、対中国との貿易で47.7%※6を占めています。アメリカと中国で行われた関税の引き上げは、「米中貿易戦争」と呼ばれ、世界経済の拡大を阻む要因になったと指摘されています。
中国は日本の輸出相手国でもあります。中国経済が減退してくれば、日本企業へのマイナスの影響は避けられません。
では、日本とアメリカの経済関係を見ていきましょう。2019年財務省の「貿易統計」※7によれば、
日本の輸入相手国
1位 中国 18兆4537億円(23.5%)
2位 米国 8兆6402億円(11.0%)
3位 オーストラリア 4兆9578億円(6.3%)
日本の輸出相手国
1位 米国 15兆2545億円(19.8%)
2位 中国 14兆6819億円(19.1%)
3位 韓国 5兆438億円(6.6%)
というように、アメリカは日本の貿易国として重要な位置を占めてします。
また、アメリカへの主要な輸出品を品目別にみると、
アメリカへの輸出品目
1位 自動車
2位 原動機
3位 自動車部品
4位 半導体等製造装置
となっています。
企業活動もグローバル化しています。かつて日本の製造業は、日本で製品を作って海外に輸出することが多かったのですが、今では同じ企業でも、生産拠点を海外に持って製造を行っています。そのため製品の他にも、製品を作るための部品を輸出しています。また、部品や製品の組み立ては、人件費の安い中国や東南アジア諸国で行っている会社も多くなっています。
製造業では、そうした国際分業を行っているため、コロナの感染が拡大し、海外で製造された日本のメーカーの住設機器が日本に入ってこないので、大幅に住宅建築の工期が延びたという話もよく聞かれました。また、部品が1つ足りなくても製造ができないので、自動車工場が休業にもなりました。それくらい何かの要因でバランスが崩れてしまうと、経済活動に支障をきたすことになります。
※6:外務省「米国経済と日米経済関係」米国の貿易赤字の国別額(物品のみ) ※7:財務省「貿易統計」
アメリカ経済の日本への影響は?
アメリカ経済が下振れすることによって、海外向けの輸出が多い業種では需要が落ち込み、生産が弱含みになってしまいます。生産が落ち込めば、当然のことながら設備投資を手控えます。大企業の製造業では、輸出が増えれば設備投資も増え、輸出が下振れすれば設備投資も減る相関関係※8にあります。
輸出割合が多い国のGDPほど、相手国のGDPと連動しやすくなっています。日米の経済関係は、自動車などの輸送機械や電気機械を輸出していることから、その相関関係が顕著に表れることになるでしょう。
アメリカ市場の好景気に支えられて、日本企業はアメリカでの直接投資を増やして※9きました。過去10年間で約2倍になっています。アメリカの好景気の恩恵を日本も受けてきました。トランプ政権下での輸入規制もありましたが、両国は会談を重ね2020年1月には、日米貿易協定等も発効しています。貿易関係が強まったことによって、輸出の多い日本は、アメリカのDGP成長率の連動性が高まることになるでしょう。
企業による直接投資
資料:外務省「米国経済と日米経済関係」2020年より引用
※8:内閣府「令和元年度年次経済財政報告」令和元年7月 ※9:外務省「米国経済と日米経済関係」令和2年4月
今後の経済動向は、ワクチンが鍵?
日本経済は、アメリカの影響を強く受ける経済関係にあります。2020年第2四半期のGDPのマイナス成長は、コロナショックによるもので大打撃を受けています。ワクチンの開発に至っていないので、「ウィズコロナ」が長期化するのではとの観測がされています。アメリカ経済が下降すれば、世界不況が発生するという説まであります。
しかし、V字回復はできなくても、ワクチンの実用化の目途が立てば、経済は上向くのではないでしょうか。
執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP)池田幸代