3章第5話:「1日の終わりに」/恋する3センチヒール
大介から株の話を聞いた翌日。
ついに新しいお金の運用の話を進めることにした玲奈。
前回 3章第4話:「NISA口座開設!」
3章第5話「1日の終わりに」
【片桐玲奈様。立花先生から、ご紹介に預かりました。児玉紗愛子です】
5月17日、火曜日の夜に学生時代の恩師である立花先生に紹介して頂いた、紗愛子さんとお会いすることになった。
4月に立花先生にお会いした時に、ひょんなことからお金の運用の話しになったのがキッカケ。
紗愛子さんは、投資用不動産会社で働いて7年目になるベテランの営業マン。
立花先生自身も、紗愛子さんから投資用不動産を購入していると言っていた。
―どんな人なんだろ…
大学の先輩でもある、紗愛子さん。
ベッドの上に寝転び、携帯電話の画面をまじまじと見た。
―出来る営業マンだなんて…。上手く言いくるめられて、すぐ買わされちゃったりして…。困ったなぁ
独り言とは別に、心の中は何も困っていなかった。
兄の死という悲しすぎる現実から、学んだ『保障』の重要性。
保障について調べているうちに、私の興味は『お金の運用』に変わっていた。
そして、私は『不動産投資』に興味を持った。
保障と、お金の運用。
この2つの意味を持っている『不動産投資』。
興味はあるけれどなんだか敷居が高い気がしてしまって、今まで一回も話しを聞いたことがなかった。
そして、立花先生に相談した結果、今回こうして紗愛子さんと会う流れに…。
―この前、偉そうに俊明くんにポートフォリオの話しをしておきながら、自分はまだ保険と株しかやっていないからなぁ…。やっぱり、ポートフォリオを組むとして、不動産投資は外したくないし。
俊明くんの姿を思い浮かべると、昨日会った大介さんの姿も同時に思い出した。
―大介さんは、株とFXか。大介さん、色々と詳しそうだからNISAやってます!とか言えないなぁ。これからも、基本的に知らないスタンスを貫いて、大介さんから色々学んでいこうっと。
携帯電話を適当にいじりながら、二人のことを考えていた。
そして、なんとなく開いたスケジュール表。
「あれ?」
画面を見た私は、思わず苦笑いをした。
―私、明日大介さんとカフェに行って、明後日は俊明くんと夕飯食べに行くんだ…。
しばらく、ぼんやりと画面を眺めた。
―どうせなら、今日買った新しいパンプスを下ろそうかな。
明日の自分のために、玄関に新しい靴を置いた。
店員に勧められた、恋に効くと噂の3センチヒールのパンプス。
玄関にチョコンと置かれた新品の靴を見て、私の心はどこか満たされた。
「よし、寝よう」
アラームを設定して携帯電話を枕元に置いた。
電気を消して、布団に潜り込む。
―二人とも彼女いるんだろうな…。
一人ぼっちの夜。
寂しさに溺れてしまう前に、私は布団で顔を隠した。