フリーランスと正社員ではどっちがトク? メリットとデメリットは?
サラリーマンの副業が少しずつでも認められている昨今、20代30代の相談者の多くは、「会社員」で一生あり続ける事に、抵抗を感じているようです。
今回はそんな読者層のみなさんが、フリーランスとして働く上で、知っておかなければいけない事をまとめてみたいと思います。
安定した収入なら正社員、スキルで高収入を求めるならフリーランス
誰もが何より知りたいこと、それは「収入」でしょう。会社員は「給与」という名目で、毎月決まった金額を受け取ることができますが、フリーランスの場合はまったく異なります。まず「給与」という名目ではなく、「報酬」や「料金(○○料)」として受け取る事になります。
給与は会社からみれば、仕入代や販売管理費用と同じように、「人件費」として利益から差し引くコストとなります。その後残った利益は、会社の経営方針によってボーナスとして支給されたり、内部留保として会社内に残しておいたり、さまざまです。少なくとも会社員である個人ひとりが決める事のできるものではありません。
それに対してフリーランスは、入ってきた報酬等はすべて自分のものです。とはいえ、報酬等が入る前に手出ししている費用があるのがほとんどでしょう。設備や仕入れ、ビジネスを広げるための交際などに、費用がかかるのが一般的です。報酬等とそれらを相殺して、残ったものが「利益」となりますが、そのすべてが自分のものです。
会社員のように、企業全体で出た利益を、時には不平のある人事評価ごとに、配分されたりはしません。これがフリーランスの、最大の魅力のひとつでしょう。
ただし「安定性」をもとめるなら、会社員とフリーランスでは比較をするまでもない話です。フリーランスでは、軌道に乗るまでの間や、業種よってはまったく収入のない月があるのも珍しくないでしょう。収入はすべて自己の責任のもと、結果として受け止めなければなりません。
税金面では、フリーランスが有利?
税金面ではどうでしょうか。実は会社員の多くの人が知らないというのですが、フリーランスが経費として認められる範囲は、日常の中で多いものです。実際1週間のうち5日間を会社員と同じように仕事をしていれば、取引先と商談を交えながら食事をし、また仕事のヒントとなるための雑誌や本を購入していれば、相当な費用が積み重なります。
それらはほとんど税務上「経費」として認められる事が多く、経費と認められれば、収入から差し引いた残りの利益にのみ課税されますので、会社員の「給与所得控除」よりも柔軟に、実態に合わせた形での課税になります。
サラリーマンの給与所得控除は、収入額に応じて一定額を控除する事ができる、いわば個人事業主の経費に充たるものです。これは国税庁が定めた計算式によって、控除額が決まっているので、実態とそぐわない場合も考えられるのです。
このような面からみれば、税務面ではフリーランスのほうが有利とも判断できそうです。ただし、年間を通して領収書の取りまとめや、青色申告者であれば帳簿の整備など、会社員には不要な事務作業も必要になります。
社会保障は会社員だからこその特権、と心得て
忘れてはいけないのが、社会保障です。日本は最も公的保障が手厚い先進国のひとつです。会社員が意識することなく、毎月の給与から差し引かれている公的保険料の数々は、労使折半(ろうしせっぱん)で、皆さんが支払っている額の同額を、雇用主である企業も支払っているのです。
毎月の給与から控除される金額の多さに、嫌気がさしている人も多い事とは思いますが、同じ額を会社が払ってくれていて、そのおかげで将来の老齢年金の受給額が算定されていることも、知っておくべきでしょう。
また、大企業の健康保険組合などは、独自の規定で、ひと月に支払う医療費の上限が、国の高額療養費制度の上限額よりはるかに少なくてすむ場合もあります。このような恩恵は、その企業に勤めているからこそのものです。
それに対してフリーランスでは、社会保障と呼ばれるものは、国で定められた最低限のものになります。
フリーランスの人が加入する国民年金保険の障害年金は、厚生年金に加入している会社員が3級から支給されるのに対して、2級以上での支給となります。また老後の生活費となる老齢年金は、基礎年金部分だけですので、私的年金としてiDeCoや民間保険会社の個人年金など、老後のことを考えると自助努力が不可欠です。
他に特に注意すべき点では、会社員が加入する雇用保険は、「雇用」されていないフリーランスには制度自体がなく、収入は自己責任で得るものとなります。
まとめ
3つの面から会社員とフリーランスとの、メリット・デメリットを比較してみました。実際はどちらかひとつしか選べないのではなく、会社員でありながらフリーランスもするということもできます。
もっとも効率よく収入・税金・社会保障の恩恵にあずかるには、この二束のわらじを履くことだと、筆者は結論付けます。皆さんもフリーランスでの仕事を考えるときは、参考にしてみてくださいね。