年金を月20万円もらうにはどうすべきか? FIRE後の年金も増やせるのは本当か

年金を月20万円もらうにはどうすべきか? FIRE後の年金も増やせるのは本当か
マネーケア

老後の年金がいくらもらえるのか、足りないのではないかと不安に思う方は多いでしょう。そこで今回は、年金を増やすために押さえておきたい4つのポイントをご紹介。中でも繰り下げ受給は、年金額を大きく増やすのに役立ちます。

また、月20万円の年金をもらう方法と、FIRE(経済的自立と早期リタイア)後の年金の考え方を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

年金を増やすために押さえておきたい4つのポイント

日本の公的年金には、20歳から60歳までのすべての人が加入する国民年金と、会社員や公務員が勤務先を通じて加入する厚生年金の2つがあります。

会社員や公務員は、国民年金と厚生年金の両方に加入しています。そして原則65歳から、国民年金と厚生年金の両方から老齢年金を受け取れます。国民年金から受け取れる老齢年金を「老齢基礎年金」、厚生年金から受け取れる老齢年金を「老齢厚生年金」といいます。

それに対して、自営業やフリーランス、会社員や公務員に扶養されている専業主婦(夫)などは厚生年金に加入していないため、老齢年金は国民年金からの老齢基礎年金のみとなります。

会社員・公務員の公的年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)の平均受給額は月額14万4366円厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)です。年金は老後の大切な収入源に違いありませんが、将来の年金生活をイメージした際に「もう少しもらいたい」と考える方も少なくないでしょう。

もらえる年金額を増やすには、年金額がどう決まるか、そしてどうすれば年金が増えるかを知っておくことが大切。次の4つのポイントを押さえておきましょう。

年金を増やすポイント1:老齢基礎年金と老齢厚生年金で計算方法が異なる

老齢基礎年金の金額は、国民年金保険料を納めた期間で決まります。原則として、20歳〜60歳までの40年間(480ヶ月)国民年金保険料を支払った場合、老齢基礎年金は誰でも満額受け取れます。2022年度の老齢基礎年金の満額受給額は年77万7800円です。保険料の払込期間が40年に満たない場合は、その分減額されます。

それに対して、老齢厚生年金の金額は「平均年収÷12×0.005481(給付乗率)×加入月数」という式で簡易的に計算できます。老齢基礎年金とは違って、計算式に平均年収が入っています。つまり、老齢厚生年金は、平均年収が多いほど、加入月数が多いほどもらえる金額が増えます。

年金を増やすポイント2:平均年収762万円を超えると老齢厚生年金は増えなくなる

老齢厚生年金の金額は、平均年収が多いほど増えるのですが、上限があります。具体的には、年収762万円を超えると、それ以上は増えなくなります。

厚生年金保険料などの社会保険料を算出するときには、「標準報酬月額」という基準の給与を用います。標準報酬月額は、原則毎年4月〜6月の給与の平均額(報酬月額)を等級表に当てはめて算出します。

標準報酬月額の上限は32等級(65万円)です。報酬月額63.5万円以上の方は、すべて32等級です。そのため、平均年収762万円(63.5万円×12ヶ月)を超えると、年収1000万円でも2000万円でも支払う厚生年金保険料は同じで、受け取れる老齢厚生年金の金額も同じになります。

年金を増やすポイント3:厚生年金は70歳まで加入して増やせる

国民年金は原則60歳までしか加入できません。また、40年(480ヶ月)以上国民年金保険料を納めることができません。

一方、厚生年金は原則70歳まで加入できます。働き続けることで加入月数が増えると、受け取れる厚生年金の金額も増えます。

年金を増やすポイント4:年金の繰り下げ受給で受け取れる金額が増やせる

年金の受け取りは原則として65歳からですが、受け取りの開始時期を66歳〜75歳までの間に遅らせることができます。これを繰り下げ受給といいます。

繰り下げ受給の最大のメリットは、年金額を大きく増やせることにあります。繰り下げ受給では、65歳から1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増えます。最長で75歳まで繰り下げると、年金額が84%も増やせます。

年金を月20万円もらえるようにするには?

年金受給額の平均は14.4万円ほどですが、もしも年金が20万円もらえたら、生活にもゆとりが出るでしょう。年金を月20万円もらえるようにするにはどうすればいいのでしょうか。

まずは、23歳から厚生年金に加入して60歳〜65歳まで働いた人が65歳からもらえる年金額を見てみましょう。

年金早見表(23歳から厚生年金に加入した場合)

年金早見表(23歳から厚生年金に加入した場合)
※国民年金満額(77万7800円)と厚生年金額の目安
※60歳〜64歳の金額は65歳時点での受給金額を表示

(株)Money&You作成

表の横の行は厚生年金の加入期間と年齢、縦の列は平均年収を表しています。また、表内の金額は国民年金満額(77万7800円)と厚生年金の金額を合計した目安の金額(年額)を示しています。なお、64歳までの金額は、繰り上げ受給はせずに65歳時点で年金を受け取った場合の金額です。

年金を月20万円もらうには、年金の年額が240万円以上必要です。

平均年収が762万円ならば、60歳まで厚生年金に加入して働くことで、65歳から月20万円以上の年金をもらうことができます。

より細かく計算すると、平均年収が約739万円あれば、月20万円に達します。

老齢基礎年金が仮に年78万円もらえるとすると、必要な老齢厚生年金は年162万円です。これを満たす平均年収を計算すると、

老齢厚生年金の年額(162万円)=平均年収÷12×0.005481×480
平均年収=162万円×12÷0.005481÷480
平均年収=約739万円

とわかります。

平均年収が739万円に満たなくても、平均年収が700万円あれば、64歳まで厚生年金に加入して働くことで年金が月20万円もらえます。しかし、平均年収がそれ以下の場合は、65歳まで働いても年金は月20万円に届きません。

では、70歳まで厚生年金に加入しながら働いたらどうなるでしょうか。

年金早見表(65歳以降も厚生年金に加入して働く場合)

年金早見表(65歳以降も厚生年金に加入して働く場合)
※国民年金満額(77万7800円)と厚生年金額の目安

(株)Money&You作成

65歳以降も厚生年金に加入して働くことで、年金額は少しずつ増えます。

しかし、仮に平均年収600万円でも、70歳まで働いても年金は年235.6万円。月19.6万円ほどにしかなりません。

そこで、年金の受け取りを遅らせる繰り下げ受給を行います。65歳以降、厚生年金に加入して働きつつ、75歳まで年金を繰り下げた場合にもらえる年金額は、次のとおりです。

年金早見表(65歳以降も厚生年金に加入&年金の繰り下げ)

年金早見表(65歳以降も厚生年金に加入&年金の繰り下げ)
※左表:国民年金満額(77万7800円)と厚生年金額の目安

(株)Money&You作成

繰り下げ受給を行うことで、年金を月20万円以上もらえる人が一気に増えました。たとえば、平均年収が300万円でも、70歳まで働き、72歳まで年金を繰り下げ受給すれば、以後は月20万円以上の年金が受け取れる計算です。

70歳以降は原則として厚生年金に加入できないので、年金額の増加は年金の繰り下げ受給によるものだけになっています。しかし、年金の繰り下げ受給を75歳まで行えば、平均年収200万円でも年金月20万円近くの年金を受け取れます。

年金の繰り下げ受給の最大のメリットは、このように、もらえる年金額を最大84%も増やせることにあります。老後の年金を増やしたいならば、まずは繰り下げ受給を検討しましょう。年金を繰り下げている間は年金がないので、その間の生活費を用意する必要がありますが、60歳以降も働くことで給与収入があれば、生活費も用意しやすいでしょう。

ただ、繰り下げ受給をした場合、長生きでなかった場合は、もらえる年金の総額が少なくなってしまう可能性があることは押さえておきましょう。

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頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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