投資の利益にかかる税金を一覧で紹介 確定申告は必要?

投資の利益にかかる税金を一覧で紹介 確定申告は必要?
マネーケア

投資で得られた利益にかかる税金。税金は、支払うのがルールとはいえ、税金がいくらかによって、投資のリターンは大きく変わるのですから、ぜひ把握しておきたいところです。

今回は、投資の利益にかかる税金と、その税金の納め方を解説します。

投資の利益には税金がかかる

投資の利益には、税金がかかります。主な投資の利益には、次のような税金がかかります。まずは一覧で、どんな税金がかかるのかをみてみましょう。

主な投資の利益にかかる税金

(株)Money&You作成

投資の利益にかかる税金には、個人の所得に対してかかる「所得税」、お住まいの都道府県・市区町村に支払う「住民税」、そして東日本大震災からの復興財源として納める「復興特別所得税」の3種類があります。なお、復興特別所得税は2037年(令和19年)までの期間限定でかかる税金です。

分離課税と総合課税

投資にかかる税金の課税方法には、分離課税と総合課税の2種類があります。

分離課税は、他の所得と切り離して税額を計算する課税方法です。上の表のうち、預貯金・株式・債券・投資信託・外貨預金の利息・FXの利益は分離課税で、他の所得とは関係なしに合計20.315%の税金がかかります。たとえば、株式投資で100万円の利益が出た場合、100万円×20.315%=20万3150円が税金として引かれます。よって、手元に残る金額は79万6850円となります。

一方、総合課税は、給料など他の所得を合算して税額を計算する課税方法です。上の表のうち、外貨預金の為替差益・不動産投資・暗号資産(仮想通貨)の利益にかかる税金は総合課税で課税されます。

総合課税の税率は、所得税が合計の所得によって5%〜45%の7段階に分かれています(住民税は10%)。所得が少ない場合は5%・10%で済むため、税額は先の分離課税より安く済むかもしれません。しかし、仮に大きく利益が出た場合には、税金も高くなってしまう可能性があります。

所得税の速算表

(株)Money&You作成

この表は、所得税の金額をさっと計算できる速算表です。

「課税される所得金額」は給料などからの所得のほか、外貨預金の為替差益・不動産投資・暗号資産(仮想通貨)の所得を加えた合計金額です。その合計金額に応じた「税率」をかけて、「控除額」を引くことで所得税が計算できます。

また、金は投資の仕方によってかかる税金が変わります。金価格への連動を目指して運用される金投資や金ETFの利益は分離課税、金の現物、金地金(きんじがね)の売買や純金積立の利益は総合課税の対象になります。

確定申告は必要? 必要な場合はどうする?

投資で利益を得た場合には、原則として確定申告が必要です。確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に得た所得を計算して申告し、税金を納めることです。

しかし、投資の利益を得たら必ず確定申告が必要かといえば、そうではありません。以下、金融資産別に確定申告が必要か不要か、紹介します。

●預貯金…確定申告不要(源泉分離課税)

預貯金の利息を得た場合は、確定申告不要です。

分離課税には、確定申告を行って税金を納める申告分離課税と、所得を得た時点で税金が差し引かれて確定申告が不要になる源泉分離課税の2種類があります。預貯金の利息は源泉分離課税利息を受け取る段階で税金が差し引かれるため、確定申告をする必要はありません。なお、総合課税は確定申告が必要です。

たとえば預金金利が年0.001%のとき、100万円預けて得られる利息は年10円。この10円にも20.315%の税金がかかるので、実際に振り込まれる利息はわずか8円になってしまいます。

●外貨預金…為替差益が出たら確定申告必要(総合課税)

ドルやユーロなど、日本の円以外の通貨を預金する外貨預金の利息については、預貯金と同じく源泉分離課税なので、確定申告は必要ありません。しかし、為替レートの変動によって生まれた為替差益は総合課税の対象に。預けていた外貨を円に戻したときの利益(為替差益)が年間20万円を超えた場合は、確定申告をする必要があります。

●株式・債券・投資信託…原則確定申告必要(申告分離課税)だが確定申告不要な口座も

株式の値上がり益や配当金、債券の利子や譲渡益・償還差益、投資信託の値上がり益や分配金は、いずれも申告分離課税です。したがって、原則としては確定申告が必要です。しかし、金融機関の口座のうち「特定口座(源泉徴収あり)」を利用した場合は、利益が出るたびに金融機関が税金を計算して、自動的に税金を納めてくれるため、確定申告の手間をなくせます。それ以外の「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」を利用した場合は、確定申告が必要になります。

なお、どの口座を選んでも、手数料などはかかりませんので、確定申告の手間をなくしたいならば特定口座(源泉徴収あり)を利用しましょう。

●FX(外国為替証拠金取引)…確定申告必要(申告分離課税)

通貨を売買して稼ぐFXの利益も、株式・債券・投資信託同様に申告分離課税です。しかし、FXの口座には特定口座がありません。したがって、年間20万円を超える利益があった場合には確定申告が必要になります。

●金地金・純金積立…確定申告必要(総合課税)

金投信や金ETFは投資信託なので、上で紹介した投資信託と同じ扱いです。

金地金や純金積立の取引で得た利益は、「譲渡所得」とみなされ総合課税の対象になります。譲渡所得には、年間で50万円の特別控除があります。つまり、金の売却益とその他の譲渡益の合計が50万円を超えた場合に、その超えた部分に課税される、というわけです。

譲渡所得には、保有期間5年以内に売却した場合の「短期譲渡所得」と、保有期間5年超で売却した場合の「長期譲渡所得」があります。短期譲渡所得と長期譲渡所得では、譲渡所得の計算式が異なります。

・短期譲渡所得(保有期間5年以内)=(金の売却益+その他の譲渡益)-50万円
・長期譲渡所得(保有期間5年超)={(金の売却益+その他の譲渡益)-50万円}×1/2

5年超保有し、長期譲渡所得になると、課税対象となる金額が半分になるため、支払う税金が大幅に減ります。

なお、金投資の所得は他の所得と損益通算(後述)できません。

●不動産投資…確定申告必要(総合課税)

アパートやマンションを貸し出す不動産投資で得た家賃収入は「不動産所得」といって、総合課税の対象です。不動産所得は、不動産投資で得られた総収入金額から、固定資産税、損害保険料などの必要経費を差し引いた金額です。不動産所得は他の所得と損益通算できます。

●暗号資産(仮想通貨)…確定申告必要(総合課税)

ビットコインやイーサリアムといった暗号資産で得られた利益は「雑所得」となり、総合課税の対象です。他の所得と損益通算することはできません。暗号資産はリスクが高く、ときに大きく値上がりして話題になりますが、大儲けするほど税金も高くなります。

たとえば暗号資産で儲けて、課税される所得金額が5000万円になったとします。このとき、所得税の金額は5000万円×45%-479万6000円=1770万4000円に。加えて住民税(10%)が500万円かかるので、税額の合計は1770万4000円+500万円=2270万4000円となってしまいます。実に利益の4割以上が税金として持っていかれることになります。

「確定申告必要」の利益があった場合は、確定申告を行います。確定申告の期間は原則として毎年2月16日〜3月15日となっています。おすすめはスマホでの確定申告。国税庁の「確定申告書作成コーナー」にアクセスし、画面の案内に従って操作するだけで簡単に手続きできます。税務署に足を運ぶ必要もなく、手軽です。

なお、次項で紹介しますが、損失が発生しても確定申告をすることで節税できることがあります。

続きを読む
1 / 2

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

プロフィール

関連記事一覧