コロナ禍で日本の年金運用はどうなった? GPIFの運用成績をチェック
コロナ禍でもGPIFの運用成果は絶好調
GPIFの運用は将来の年金を補うため。そう聞くとやはり気になるのは、GPIFの運用成果ではないでしょうか。もしもGPIFが大損してしまったら、将来の年金が消し飛んでしまうかもしれません。そうなったら、大変ですよね。
しかし、ご安心ください。実はしばしば、ニュースなどで報じられてはいますが、GPIFの運用成果は、大きくプラスになっています。
GPIFの運用成果(2001年〜2021年度第1四半期)
GPIFのウェブサイトより
GPIFが運用を始めたのは2001年から。この約20年間の収益率(年率)は3.70%、2021年度第1四半期時点の収益額は累積で100.3兆円ものプラスになっています。
もちろん、短いスパンで見れば資産を減らしているところもあります。2008年に発生したリーマンショック(米国の投資銀行、リーマン・ブラザーズの破たんによる世界的な金融危機)のときや、2020年のコロナショック(新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞)のときなどは、収益率が伸び悩んでいます。
しかしGPIFは、リーマンショックやコロナ禍を乗り越えて、収益を大きく伸ばせているのです。
なお、GPIFが仮に今年大儲けしても、来年の年金支給額が増えることはありません。逆に、大損したからといって、来年の年金支給額が減ることもありません。
GPIFの年金積立金は、あくまで将来の現役世代の負担を軽減するためのお金だからです。
GPIFはどうしてコロナ禍でもお金が増やせたのか
上のGPIFの運用成果を見ると、GPIFは着実に資産を増やしてきたことがわかります。そのうえ、2020年のコロナショックのあとは、一段と資産を増やせています。何しろ、2020年度の収益額は+37兆7986億円、収益率は年率+25.15%。GPIFの年度別の成績で過去最高を記録しています。
また、2021年度の第1四半期も+4兆9819億円、収益率2.68%と、引き続き好調です。
そんなGPIFの運用先(ポートフォリオ)は、次のようになっています。
GPIFのポートフォリオ
GPIFのウェブサイトより
GPIFのポートフォリオは、国内株式・国内債券・外国株式・外国債券の4つの資産に25%ずつ投資する分散投資が基本。
債券と株式の割合は50%ずつが基本です。
「基本」としたのは、市場の動向や運用成果などに応じて、資産の構成割合が多少前後することがあるからです。これを「乖離許容幅」といいます。
国内株式は±8%、外国株式と国内債券は±7%、外国債券は±6%の乖離許容幅が設けられています。また、株式全体・債券全体でも±11%の乖離許容幅があります。
2021年6月末時点でのGPIFのポートフォリオはほぼ均等。もっとも多い外国株式ともっとも少ない国内株式の割合の差は1%ほどです。とはいえ、1%違うだけで2兆円近く変わるのですから、GPIFの資産の多さがわかりますね。
GPIFは、お金を減らさずに増やす運用をするために、このようなポートフォリオを組んでいるのです。いくら投資のプロ集団だからといっても、絶対値上がりする投資先がわかるわけではありません。
ポートフォリオを組み、分散投資を行い、その枠組みを守りながら投資を行うことで、堅実に資産を増やしてきたのです。
実際、GPIFの「2020年度業務概況書」によると、2020年度は新型コロナウイルスの影響で株価が大きく下落した(株式の割合が減った)ため、株式を買い入れてポートフォリオにおける株式の比率を50%付近まで戻したといった説明がなされています。
その後、年後半に株価が回復したことを受けて、資産が順調に増加しました。
その結果、2020年度の国内株式の収益率は41.55%、外国株式の収益率は59.42%となったのです(なお、国内債券の収益率は−0.68%、外国債券の収益率は7.06%)。
もっとも、株価が上昇したからそれでよし、ではありません。逆に株式の比率が上昇しすぎてしまったため、国内・外国株式の売却もして、常にポートフォリオのバランスをとっています。
こうして、お金を減らさずに増やす運用を心がけているのです。実際、各種研究によると、運用成績の9割は資産配分で決まるといわれています。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
▶︎【ミレニアル世代のマネー学】運用成績の9割が資産配分で決まるって本当?コアサテライト戦略を実践しよう
個人でも「お金を減らさずに増やしたいなら」基本は4資産分散投資
こうしたGPIFの資産配分や投資の手法は、個人でも真似することができます。国内株式・外国株式・国内債券・外国債券の4つの資産に分散投資すればいい、というわけです。
もしどれか1つの資産に集中投資した場合、それが値上がりしたときはいいのですが、値下がりしたら大損してしまいます。しかし、分散投資しておけば、値下がりの損失も限定的ですし、他のどれかの値上がりで補いながら、資産を堅実に増やす期待ができます。
一般に、株式と債券は逆の値動きをするといわれています。
実際、2020年のコロナショックのときには、株価は総じて下落しましたが、米国の10年国債の価格は上昇(=債券の利回りが下落)しました。これは、株式だけでなく、債券を組み合わせることで、値下がりのリスクが少なくできたということを示す好例です。
GPIFも、こうした関係を知っているからこそ、分散投資をしているのです。
とはいえ、個人でこれら4つの資産を購入するのは情報収集の面でも手続きの面でもなかなか大変です。そこで、お勧めしたいのが投資信託(ファンド)です。
投資信託は、投資家から集めた資金を資産運用の専門家(ファンドマネージャー)が運用してくれる商品です。運用で得た利益は、投資家に還元されます。
国内債券に投資するファンド、国内株式に投資するファンド、外国債券に投資するファンド、外国株式に投資するファンドの4つに均等分散投資すればOK。
でも、4つに投資するのも面倒だという方がいることでしょう。そんな方にお勧めなのが、バランス型ファンドです。
バランス型ファンドは、1本で株式や債券など複数の資産に分散投資しています。ですから、1本買うだけで簡単に分散投資をするのと同様の効果が得られる、というわけです。これなら、手軽ですね。
4資産に分散投資をするバランス型ファンドでお勧めするのは「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」です。
<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)
純資産総額:141.39億円
基準価額:13,968円
信託報酬(税込):年0.154 %
※2021年8月5日時点
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)は、「4資産均等型」という名前からもわかるように、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式に25%ずつ均等に投資するバランス型ファンドです。
GPIFのポートフォリオとよく似ていますね。1本買うだけで、債券50%・株式50%の運用をすることができます。
外国債券・外国株式はどちらも先進国のもので、新興国のものは含んでいません。ですから、比較的リスクを抑えながら、資産増も狙えます。
そのうえ、投資信託を保有している間にかかる信託報酬も年0.154%と低水準です。
さらに、つみたてNISAを利用して購入すれば効率よく増やせます。
つみたてNISAは、投資した年から最大20年間にわたって、年間40万円までの投資で得られた利益にかかる税金を非課税にできる制度です。
投資の利益には、通常20.315%もの税金がかかります。これがゼロにできるのですから、普通に(課税口座で)投資するよりもはるかに効率よくお金を増やせます。
つみたてNISAでは、金融庁の一定の基準を満たした、長期の資産形成に向くと考えられる投資信託・ETF(上場投資信託)にしか投資できません。
このニッセイ・インデックスバランスファンドも、つみたてNISAの対応商品。SBI証券・楽天証券・マネックス証券などのネット証券で取り扱いがあります。
GPIFの投資の方法をまねして、お金を減らさずに増やす運用をぜひ実践してみましょう。