第9話:水色のノート/恋する3センチヒール
オトンから言われた言葉により、自分の置かれている状況を理解した俊明。
今回、玲奈を想う気持ちが明らかになる・・・?!
前回 第8話:「オトンと日本酒」
第9話:「水色のノート」
「玲奈さんに、似合うお店を探してみました」
前回会ったのは、5月16日の月曜日。
毎週月曜日に、三週間続けて俊明くんと会った。
前回別れ際の改札で「次のお店は、僕が予約します」と、スマートな口調で去って行った俊明くん。
待ち合わせ場所の表参道で会った俊明くんの表情からは、余裕を感じた。
たった三週間で、スーツが似合う男になったなぁと思う。
「二倍楽しみだなー」
ピースサインを両手で作って、Wの形にして笑うと、俊明くんは首を傾げた。
「二倍って、なんですか?」
「ん?忘れたの?」
「もしかして、ポートフォリオのことも入っています?」
「大正解!」
俊明くんが予約していたお店は、白が基調の店内に木製の家具が配置されている明るいオーガニックカフェだった。
「わっ。こんな女子力高い感じのお店に来たの、久しぶりかも」
俊明くんは、少し大袈裟に驚いた表情をした。
「確かに、玲奈さんが選ぶお店って、出来る男が好きそうなお店ですもんね」
「性格、男ぽいってよく言われるからなー」
せっかくだから、お店一押しのサングリアを二人で注文した。
「ポートフォリオで、ポートフォリオを作ってきました!」
乾杯も終わって、テーブルの上の食べ物もつまんだ後、満面の笑みで俊明くんは言った。
「ん?」
「デザイナーさんとかが、自分の能力を伝えるための作品集として作成しているやつとかも、ポートフォリオって呼びますよね?そっち寄りにまとめてみました」
合っているようで…、間違っているような…。
微妙な心もちになりながら、なんとなく突っ込まなかった。
俊明くんは鞄から水色のノートを出すと、満面の笑みでノートを差し出した。
「土日休みで、頑張って作りました」
水色のノートを受け取ると、サプライズのプレゼントを受けとったかのように、パァァァと幸せな気持ちが私の中に広がった。
丁寧に、私は水色のノートを開いた。