年収1000万円でも「老後破綻」 投資で資産をいくら補える?

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老後破綻は投資で防げる? つみたてNISAとiDeCoでお金はいくら増やせるのか

老後破綻を防ぐために、投資でお金を増やすことを考えましょう。ぜひ活用したいのは、つみたてNISAとiDeCoです。

つみたてNISAは、投資の利益を非課税にできる「NISA」の制度のひとつ。毎年40万円

までの投資で得られた利益を20年にわたって非課税にできます。投資できるのは金融庁が定めた基準を満たす投資信託のみ。コツコツと長期投資しながらお金を増やすことができます。

iDeCoは、自分で毎月一定の掛金を支払って定期預金・保険・投資信託で運用し、その成果を60歳以降に受け取る制度。運用によってお金が増えれば、もらえる老後資金も増えます。

iDeCoでは、支払った掛金が全額所得控除できるため、毎年の所得税や住民税を安くできます。そのうえ、つみたてNISAと同様に運用で得られた利益が非課税。さらに、年金を受け取るときにも税金の優遇が受けられます。

つみたてNISAもiDeCoも1人1口座ですが、この2つは併用できます。

たとえば、つみたてNISAに月3.3万円、iDeCoに月2.3万円、計5万6000円を20年間にわたって積立投資を行い、年利4%が得られたとします。もしも、投資しないでただ5.6万円を貯めているだけだと、1344万円になります。しかし、つみたてNISAとiDeCoを併用すると、お金は次のように増えます。

つみたてNISA・iDeCoを20年間併用した場合の資産額

つみたてNISA・iDeCoを20年間併用した場合の資産額

筆者作成

・つみたてNISA…約1210万円
・iDeCo…約844万円
・節税額…82万8000円 ※所得税5%・住民税10%として計算
→合計額…約2136万円

つみたてNISAとiDeCoによる資産額の合計はおよそ2054万円と、2000万円の大台を突破します。投資をしないで預金のみだった場合とは710万円の差がつきます。

さらに、今回の例ではiDeCoで所得税が1万3800円、住民税が2万7600円、合計で4万1400円が毎年節税できます。20年間の節税額の合計は82.8万円です。

以上を合計すると、資産の合計は約2136万円になる計算。投資しなかった場合と800万円近い差が生まれるのです。

投資には元本保証がないので、今後もそうなる保証はありませんが、金融庁の試算によると、過去20年間の長期・積立・分散投資のリターンは年率2%~8%となっています。年率4%は決して不可能な目標ではないことがおわかりいただけるでしょう。

老後破綻を防ぐためにできる3つのこと

老後破綻は、投資による資産形成である程度防ぐことができますが、他にも老後破綻を防ぐためにできることはあります。3つ紹介します。

●老後破綻を防ぐためにできること1:収入・支出のダウンサイジング

老後破綻が起こる大きな原因のひとつは、収入より支出が多く、赤字家計を続けてしまうから。ですから、まずは老後の収入と支出をチェックしましょう。収入よりも支出が多いなら、支出の見直しを行いましょう。

支出の見直しは上でも紹介した固定費から。固定費の削減は大きな節約が見込めるうえ、一度削減すれば効果が長続きするので手間がかかりません。固定費を見直したら、次に無駄遣いを減らし、それも減らせたら変動費も減らすことを考えます。

●老後破綻を防ぐためにできること2:60歳以降も働く

今は、60歳で定年を迎えても、引き続き同じ会社に再雇用されて働く方が多くいます。会社は「高年齢者雇用確保措置」によって、希望する人を原則65歳まで再雇用することになっているからです。そのうえ、2021年4月に施行された高年齢者雇用安定法によって、会社は70歳までの就業機会を確保することが努力義務となりました。60歳で仕事を引退するのは昔の話になりつつあるのです。働けば、給与収入が得られるので、老後破綻の心配を減らせます。

また、国民年金は原則60歳までしか加入できませんが、厚生年金は70歳まで加入できます。つまり、60歳以降も長く働くことで、厚生年金の加入月数が増えるため、受け取れる厚生年金の金額も増えます。

●老後破綻を防ぐためにできること3:年金の繰り下げ受給をする

国民年金・厚生年金の受給開始は原則65歳ですが、希望すれば60〜75歳の間で受け取りを開始することができます。60〜64歳で年金の受け取りを開始することを「繰り上げ受給」、66〜75歳で年金の受け取りを開始することを「繰り下げ受給」といいます。

繰り上げ受給をすると、年金が早く受け取れる一方、1か月早めるごとに0.4%ずつ受給率が減り、60歳まで年金の受給開始を早めると受給率は76%(24%減額)となります。

それに対して、繰り下げ受給をすると、年金の受け取れる時期は後になりますが、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ受給率が増え、75歳まで遅らせると受給率は184%(84%増額)となります。

たとえば、65歳で年金を月15万円(年180万円)もらえる人は、

・60歳まで年金を繰り上げ受給(24%の減額)
65歳:月15万円→60歳:月11.4万円(76%)

・75歳まで年金を繰り下げ受給(84%の増額)
65歳:月15万円→75歳:月27.6万円(184%)

になります。

老後のお金を増やすためには、繰り下げ受給が効果的とわかりますね。60歳以降も働くことで給与収入があれば、繰り下げ受給も選びやすいでしょう。

老後破綻のリスクは、たとえ年収1000万円だったとしてもあります。その老後破綻のリスクは、つみたてNISAやiDeCoを利用して資産形成をすることで、相当減らせることがお分かりいただけたのではないかと思います。つみたてNISAやiDeCoで堅実にお金を増やすには、何よりも長くコツコツと投資を続けることが大切。そして長く投資をするには、なるべく早く投資を始めることが必要です。ぜひ今からすぐ行動して、資産形成に取り組んでいきましょう。

高山 一恵

(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP) 2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め...

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