世界ではどのような金融教育を行っている? 日本に必要な金融教育とは

世界ではどのような金融教育を行っている? 日本に必要な金融教育とは
マネーケア

世界の金融教育の例

では、世界各国ではどのような金融教育をしているのでしょうか。
海外では、多くの国で家計管理のことだけではなく、投資についても学んでいます。

アメリカ

アメリカの金融教育は、早くからの自立を前提に、実践的な教育としてカリキュラムに組み込まれてきました。学習内容は地域や学校が決めるようになっていて、全米で統一されているカリキュラムではありません。また、学校での金融教育を地域の企業が支援するシステムもあり、地域全体で子どもの教育をしている姿がうかがえます。

金融経済教育の推進組織ジャンプスタート(Jump Start)では、中学生と高校生が理解するべきパーソナルファイナンスについての枠組みを開発しています。
教育分野は「収入」「マネー管理」「支出とクレジット」「貯蓄と投資」の主要4分野です。収入支出の基本的なことから、貯蓄や投資の理由や方法など幅広く学べる内容になっています。

子どもは成長し、大人の消費者となります。金融教育を受けて経済的に安定した消費者は、市場経済における役割を担うことになるでしょう。その結果、健全な市場を生み出し、経済全体への望ましい影響があると考えられています。
参考:https://www.shiruporuto.jp/public/family/training/susume/susume401.html

イギリス

イギリスでは、2000年から必修科目になった「シティズンシップ教育」に、お金に関する学習が含まれています。
シティズンシップ教育は、中学校レベルで必修とされていて、市民として生きていく上での基礎を勉強する科目であり、さまざまな教科を横断している教育です。

イギリスでは、ニートやホームレスの増加、政治離れなどが社会問題となっていますが、それらは先進国に共通の悩みでもあります。
シティズンシップ教育をすることで、社会的・道義的責任、コミュニティ参加、政治的リテラシーを育成し、コミュニティの再生、あるいは民主社会の活性化を目指しています。
参考:https://www.shiruporuto.jp/public/family/training/susume/susume401.html

カナダ

カナダ政府は2014年、5年間の任期で金融リテラシーリーダーを任命しました。
国家戦略は、すべてのカナダ人の金融リテラシーを強化し、お金と債務を賢く管理できるようにすることが目的です。それは、将来のために計画的に貯蓄をすることや、詐欺や経済的虐待を防止することにつながります。

そのため金融教育も盛んで、カナダの多くの州では、金融リテラシーは数学、キャリア開発、ビジネス研究、社会研究といった科目の一部に組み込まれています。
参考:https://www.oecd-ilibrary.org/education/pisa-2018-results-volume-iv_48ebd1ba-en

フィンランド

フィンランドでは、金融・起業家教育は教科横断型の科目として、20年以上の歴史があります。
最近のカリキュラム改訂では、7年生から9年生の生徒にすでに義務付けられている3時間に加えて、初等教育(4年生から6年生)に週2時間の社会科、経済学、起業家教育が追加されました。

金融教育は、フィンランドの基礎教育(1~9年生)すべての科目にリンクされている横断的な能力である、「労働生活能力と起業家精神」の一部としてとらえられています。
そして、独立した社会的および経済的主体になること、個人的な財政を管理することをゴールとしています。
参考:https://www.oecd-ilibrary.org/education/pisa-2018-results-volume-iv_48ebd1ba-en

日本に必要な金融教育とは

金融教育は諸外国でも国を挙げて行っています。金融リテラシーの高い人が増えることで、経済的に安定した暮らしを送る人が増えます。
そして、ひいては国内の経済が健全に成長していくことができるのです。

日本では、2022年から高校で家計管理をはじめとして保険や老後の備え、投資信託についても学ぶことになりました。
文部科学省が発表した「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説家庭編※4」によれば、高校の家庭科の授業では、家計の収支バランスをとることの重要性はもちろんのこと、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴を学ぶとされています。

人生の3大費用である教育資金・住宅取得・老後の備えの他にも、事故や病気、失業などリスクへの対応の必要性を学び、どのように準備をすればよいか理解が深まることでしょう。
また、収入と税金、社会保険料の関係などを通じて、家庭の経済と国の経済のつながりについても知ることができます。

家計管理について学んでおけば、収支のバランスがとれなくて、クレジットカードで買物を続けた結果多重債務に陥ってしまったり、教育・住宅・老後の資金準備をしていなくて希望するライフスタイルが実現できなかったりすることは避けられるでしょう。

そして、金融の基礎ができていることで、社会に出てから新しい金融知識を得ることも容易になるのではないでしょうか。

経済は常に動いています。
金融の学びを続けることで、1人でも多くの人が人生を楽しんで欲しいと思います。
※4:https://www.mext.go.jp/content/1407073_10_1_2.pdf

タケイ 啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。 36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務...

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