会社の制度、使う?使わない? 使うべきお得な制度はコレ!

会社の制度、使う?使わない? 使うべきお得な制度はコレ!
マネーケア

③従業員持株制度

従業員持株制度とは、従業員が毎月一定額を出して自社株(勤務先や親会社の株式)を購入する制度です。社員持株制度と呼ばれることもあります。多くの場合、会社が「従業員持株会」を作り、従業員が任意で加入します。
従業員持株制度に加入すると、会社が株式の購入金額の一部を負担してくれます。つまり、普通に市場で株式を買うよりも安く株式が手に入ることになります。財形貯蓄や社内預金と同様、給与天引きで積立投資のようなことができるのです。上場会社の多くが導入しているほか、一部の未上場会社も導入しています。

会社にとってみれば、社員たちという安定株主が自社の株を持ち続けてくれるのですから、会社の経営を安定させることができるメリットがあります。また、従業員は安く株が買えるだけでなく、業績が上がって株価が上がったり、配当金がもらえたりすれば、その分お金が増えていくのですから、よさそうに感じるかもしれません。

しかし、「会社」が自分の資産に与える影響度が高くなってしまう点には注意が必要です。会社の業績が下がってしまうと、株価も下落する可能性が高くなります。さらに業績が悪化すると、給与がカットされたり、最悪の場合倒産して仕事を失ったりする可能性も、ないとはいえません。こうしたとき、従業員持株制度を利用していると、資産も仕事も同時に失うことになりかねません。つまり、従業員持株制度を利用すると、リスクを多くとっていることになります。上手くいけばリターンは大きいですが、失敗した場合も然りです。

そのうえ、株主優待はもらえませんし、売却時にもどうしても時間や手間がかかります。したがって、従業員持株制度は無理に使う必要はありません。会社で従業員持株会への加入を勧められても断るか、加入しても少額にとどめることをおすすめします。

④団体保険

団体保険は、会社などの団体が保険の契約者になっている保険です。会社を通じて医療保険、死亡保険、所得補償保険などを選び、加入することができます。給与から天引きで保険料を支払うので、支払いが漏れる心配がありません(保険は通常、2ヶ月間保険料を未納すると3ヶ月目から契約が失効します)。

団体保険のメリットは通常の保険より保険料が割安なことにあります。保険料は人や補償内容によってそれぞれですが、場合によっては同程度の保障内容が通常の保険の半額程度で手に入ります。また、健康状態を保険会社に伝える「告知」が通常の保険より簡単に済むのもメリットです。さらに、従業員の配偶者や子どもも一緒に団体保険に加入できます。

ただし、契約者は会社ですので、ほとんどの場合、会社を退職すると継続できません(定年退職の場合は継続できるものもあります)。そのため、たとえば病気が原因で退職したら、保険が継続できないばかりか、新しい保険にも入れない事態が起こる可能性もあるのです。また、安いからといって、不必要な保障をつけてしまってはかえって無駄になってしまいます。自分に必要な保障をよく考えた上で加入する必要があります。

会社を退職・転職する可能性があるのであれば、どうしても必要な保障だけは自分で加入して、団体保険は上乗せ部分だけに活用する、というのもひとつの手でしょう。

⑤企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が出したお金(掛金)を社員自ら運用して、老後の資金を作る制度です。運用の成果は60歳以降に受け取れます。
確定拠出年金の制度にはもうひとつ、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)があります。

企業型DCとiDeCoの主な違い


表:筆者作成

企業型DCには、3つの節税メリットがあります。
まず、掛金が給料として扱われないことです。掛金を給料としてもらうと、税金や社会保険料が引かれますが、企業型DCならばそれらが引かれる前に積み立てることができます。
次に、運用益が非課税になることです。通常、運用で得られた利益には20.315%の税金がかかりますが、企業型DCではこの税金もゼロに。より効率よくお金を増やしていくことができます。
そして、受け取るときも税金の優遇が受けられることもメリットです。一時金としてまとめて受け取るなら退職所得控除、年金で受け取るなら公的年金等控除が受けられ、税金が安くなります。

企業型DCでは、元本を確保する商品として預金・保険、元本が確保されない商品として投資信託を運用します。おすすめは投資信託です。預金や保険では、将来の物価上昇(インフレ)に対応できないからです。投資信託をコツコツ積立投資していくことで利益を出せば、物価上昇にも対応できると考えられます。原則、自分の負担ゼロでできる運用ですので、ぜひ活用するべきです。

企業型DCを導入している会社では、従業員全員が加入しているケースがほとんどです。もしかすると、実はよくわからないまま企業型DCに加入していた(そして預金で運用していた)ということもあるかもしれません。自分が企業型DCに加入しているのか、加入しているとすれば今どのように運用しているのか、確認してみてください。

就職先は総合的に判断して決めよう

この他にも、さまざまな福利厚生を用意している会社があります。中には、失恋したときに休める「失恋休暇」、サイコロの出た目に応じて賞与がプラスされる「サイコロ給」、月2回、希望者がヨガのレッスンを受けられる「朝ヨガ制度」など、ユニークなものも見られます。特に就職活動をしている方なら、魅力を感じられるかもしれません。

しかし、もちろんこれらはあくまで会社に付随する福利厚生です。面接で「福利厚生が魅力だから御社を希望しました」というのでは、まず採用にはならないでしょう(「おもしろい」人が来たとは思われるかもしれませんが)。あくまで仕事内容、条件面、自分の成し遂げたいミッションなどを踏まえて、総合的に判断するようにしましょう。

すでに会社に勤めている方は、今回紹介したような福利厚生があるかを会社に確認した上で、お得なものはぜひ活用していきましょう。特に財形貯蓄・社内預金は活用し、企業型DCは商品選びをしっかりと行うべきです。そうすることで、お金の貯まるスピードは確実に変わるはずです。

執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP) 頼藤 太希

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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