社会保障費の値上がりに対して賃金は上がっているのか

年金・社会保険

社会保障費と賃金の関係は?

社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料は会社と従業員とで半分ずつ負担します。2020年度の東京都の場合、健康保険は9.87%、厚生年金保険は18.3%となっており、社会保険料の会社負担割合は給与の15〜16%※3にもなります。
ですから従業員の給料を賃上げすると、社会保険の会社負担も増えることになります。

そこで会社は、非正規の社員を雇った場合には賃金が低く、社会保険が適用されず人件費を抑制することができるため、正社員の代わりに非正規の雇用を増やすところもありました。
しかし、正社員との待遇格差が問題となり、同一労働同一賃金を定めた「働き方改革関連法案」が成立し、2020年4月から施行されます(ただし、中小企業への適用は2021年4月から)。こうなってくると、社会保険の加入条件を満たしていれば、雇用形態にかかわらず社会保険料の負担が生じてきます。

働き方改革によって、不当賃金・待遇格差が是正されることで、会社側は就業規則や賃金規定を見直すことになりました。場合によっては会社が負担する人件費が大きくなるところもあり、正社員として働いてきた人にとっては、今までのような給与アップが難しいというケースも出てくるでしょう。
※3参照:税理士コンシェルジュ「会社の負担額は?社会保険料の仕組みや計算方法など徹底解説」、ミツモアMedia「社会保険料の会社負担割合の額は? 計算方法や金額を解説」

個人でできるこれからの対策

「人生100年時代」といわれるように、平均寿命が年々延びてきています。個人でできることとして、健康で過ごすこと、できるだけ長く働くこと、自己負担増に備えることが求められます。

健康であれば医療費や介護費の負担は少ないので、検診を定期的に受けることや介護予防のため運動の習慣を取り入れていくことが有効でしょう。
その上で、長く働くことによって収入を得られるだけではなく、いきがいと健康を手に入れることができます。

しかし、将来は医療や介護の自己負担額の増加や、さらなる保険料の値上げも予想されます。消費税も上がるかもしれません。
できるだけ節税になる個人型確定拠出年金(iDeCO:イデコ)やつみたてNISAなどの制度を利用して、資産を増やす努力も必要になります。

社会保障費の値上がり対策をしておく

給料を増やすことを会社に求める春闘は、近年力強さを欠いています。2020年は車・鉄鋼の業種において、賃上げの縮小が相次いでいます。人手不足で人を雇いたくても、賃金を上げれば社会保険料の負担が重くのしかかります。このようなご時世では、大きな賃金の伸びは期待できないのではないかと予想されます。
小さなことからでも、自己防衛策を講じておくことが求められます。

執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP) 池田 幸代

池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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